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2010年2月28日
■[書籍]【俺の妹が】黒猫邪気眼問題【こんなに可愛いわけがない】(ネタバレ)
前のエントリの続きみたいな感じになりますが、『俺の妹』に登場する黒猫というキャラクタのリアリティについて、ちょっと取り上げてみたいと思います。
実は、私は最初違和感なかったんですが、黒猫の邪気眼ぷりについて、どうもうそくさい、との意見があることを知りました。
……言われてみればその通り。
『頭のいい娘であるはずの黒猫が、あんな現実離れした言動をとるのはおかしい』
確かにその解釈には説得力があります。
でも私には、指摘を受けるまでそういう違和感が全くなかった。何故か。
……恐らくそれは、私自身が割と邪気眼な中高生だったせいだと思われますw
――詳しく話すのは自爆過ぎるので避けますが。
……あ、ちなみにここで、邪気眼とは『現実世界とはかけはなれた厨設定を、現実の中に持ち込んでしまうこと』といったあたりに定義を置くとします。
とにかく、そんな私の個人的な感触として、邪気眼の有無と頭の良さには関係がないのではないか、という考えを持っています。
自分の周りを見渡しても、例えば東大京大、六大学あたりの高学歴な人間であるからといって、その小中高生時代が邪気眼と無関係とは限りません(無論、高学歴が頭の良さと直結するわけではありませんが、全くの無相関ということもないと思うのでここではその議論は置きます)。
さてここで、人は何故邪気眼になるのかを考えてみます。
邪気眼というのは、その設定の特異性ばかりが目を引きますが、それらは突然生じたものではなく、元々はある特定の作品の設定です。例を挙げるなら……まあ世代にも性別にもよるでしょうが、幽々白書であったり、ロードス島戦記であったり、あるいはドラゴンボール、最近ならゼロの使い魔とか、ワンピースなんかも入るかもしれません。……で、黒猫にとってのそれが、恐らく『マスケラ』なんだと思います。
普通の人は面白い物語に触れても「ああ、面白かった」という程度で終わってしまう方が多いでしょう。まあせいぜい、ハリウッドアクション映画を観たあと、しばらく自分が強くなったような気がしたりとか、その程度だと思います。
でも、ある種の業が深い人間はそれでは済みません。描かれた物語、登場人物の姿を全てしゃぶりつくしても飽き足らず、その作品世界そのものを自分の中に取り込もうとします。描かれたエピソードの裏側はどうなっていたのか、描かれなかった人間関係はどうだったのか、その後、本当に世界は平和になったのか、などなど。そして発想を膨らましていく中で、世界に破綻を見つけると、無理のない新設定を考え、物語をつむぎ出して修復します。こうして妄想はとどまるところを知らずに拡大していきます。当然、世界観も人物像も、どんどんリアリティを増していきます。
ついに没入が臨界点を越えると、こういうことを考えるようになります。
『もしかすると知らないだけで、この世界のどこかに、本当に彼らはいるんじゃないだろうか』
『もしかすると知らないだけで、ああいう超能力が、この世界にもあるんじゃないだろうか』
……邪気眼、一丁上がり、であります。
この辺、黒猫が同人活動をしているというあたりを含めて、非常にリアリティを感じるんですよね。
でもって、大好きなその世界観にひっぱられて、オリジナルを書いてもそっち方向から離れられなくなってしまうのです。特に若い頃は。
……とまあ、以上のようなことから、黒猫はああいう業の深い娘になっているのではないかと考える次第です。
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投稿者 文月そら : 04:06 | コメント (0) | トラックバック
2010年2月22日
■[感想/書籍]『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』(ネタバレあり)
誠に失礼ながら、侮っていた。というのが正直な感想である。
一応このお話の概略は人づてに聞いて知っていた。
曰く、妹がかわいい話である。
曰く、妹はオタクであり、それを隠している。
曰く、有名ニュースサイトの名前が出てきて、発売当初各サイト大騒ぎしていた。
などなど。
それら風評を耳にするにつけ『なんとなく内容は想像つくなあ』『まあ読めば面白いのだろうけど、なんか色々あざとい気もするしなあ』などと思い、結局手を出さずにここまできた。
そんな中、初音ミクの絵と曲から入って、挿絵のかんざきひろ氏のファンになり、コミケで本を買った余勢を駆って、自分の中で再びクローズアップされてきたのが、本作「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」だったのだ。
ということで、買って、実際に読んでみた。
当初の見込みとしては、お約束満載の萌え小説だろうと思っていた。正直、あまり好きなタイプの話じゃないかも、と思っていた。……でも、全然違った。
勿論、キャラ配置や設定をはじめ、いわゆるお約束的な道具立ては結構ふんだんに用意されている。その辺の印象は当初とそんなに違わない。しかし、それを使って描こうとしている部分、フォーカスがあたっている部分が全く違った。
それは、ひと言で言うなら『現代のオタクを巡る諸問題と、そこに生きるオタクの姿』といったものだと思う。
隠れオタクと一般人とのコミュニケーション問題であったり、いわゆる児ポ的な問題であったり、同人活動であったり、才能と嫉妬の問題であったり、オタクであること自体の恥ずかしさであったり。切り口は各巻様々だが、我々にとって結構重いテーマが、明るく、しかし真摯に描かれている。
そこに描かれる登場人物の姿も魅力的だ。彼らはオタク非オタクを問わず、思想的な対立はあっても、皆根本的には誠実で優しい。こだわりや信条、コンプレックスや偏見で時に強く対立することはあっても、皆最終的には相手の話を聞く耳を持っている。
主人公は実は非オタなのだが、彼の持つ眼差しの優しさも素晴らしいと思う。彼にはどんなに素直じゃない人間が相手でも、自然にその良さを見抜ける目がある。それなのになんで妹のことだけ散々延々と誤解し続けてたんだとも思うが、まあ身近すぎたんだろうし、その辺は語られないエピソードがありそうだ。特にアルバムのあたりに。
まあ正直なところ、現実はそんなに甘くねえですよとも思わんこともない。世の中そんないい人ばっかりではないし。……でも、それはそれとして、主人公を囲む、オタクや非オタクたちの優しい世界が、私は嫌いじゃない。
とりあえず、気配り超人こと沙織の正体と、完全な一人勝ちかと思われたヒロインレースに、最新刊で突然大外から物凄い足でまくってきた黒猫の今後が気になる作品です。
あ、一つ書き忘れたけど、タイトルから連想されるような「妹の正ヒロイン昇格」だけは絶対無い作品です。どう転がっても互いの甘えから抜け出せずに不満を溜め込んだり、当り散らしたり、すれ違ったりしてしまう。家族としての兄妹の距離感の描き方も、この作品の見事な点だと思います。
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投稿者 文月そら : 02:20 | コメント (2) | トラックバック

