« 2009年3月 4日 | メイン | 2009年3月 6日 »
2009年3月 5日
■[書籍]もうとらドラ最終巻出ちゃったけど、再読は継続する試み その4
……もう最終巻出ちゃったので、タイトルも変わっちゃいました。再読はこれからも続けたいと思います。
問題はすでに手元にある10巻をどうするか。
……まあ、頃合を見て読みます。
では、はじめたいと思います。例によってネタバレ全開ですので、ご注意くださいね。
さあ、今回は二巻読了まで。
初読時に亜美が登場した時は戦慄したものだ。お世辞にも教室内政治に長けているとはいえない竜児・大河が、恐らく相当えげつない芸能の世界で天使の仮面を磨いてきた亜美に、どれほど酷い目にあわされることか、と。
読み進めながら、妄想は加速する。亜美は大河を追い落とそうと思えば、早速出来た取り巻きを利用して、いくらでも汚い手が使える。例えば大河の乱暴についての悪い噂を流して孤立させたり(その信憑性は高いなんてもんじゃなかっただろう)、あるいは大河の弱点(家族の問題とか、北村への好意とか)を調査して責め上げたり。それこそもっと陰湿に、教師たちの大河の印象を悪くさせる工作を仕掛けたりもできる。……などと、私は脳内に次々と自動展開される今後の陰惨な展開に、勝手に恐怖しながら読んでいた。
でも亜美は、性悪ではあっても、卑怯者ではなかった。そういうことは一切せず、というか念頭にすらなく、あくまで亜美個人として大河につっかかってきた。むしろ下腹晒し上げ攻撃といい、物まねメドレー百連発といい、大河実乃梨側のほうが世っぽど人でなしだったくらいだ(笑
実のところ亜美は八方破れだ。
竜児が自分の本性に最初から気付いていることもわからなかったし、そもそも幼馴染の友達に本性を晒して無駄に敵を作るなんてうかつすぎる。つまり、本来の性悪亜美は、実は結構計算下手な、ストレートな性格なんだろう。
そんな性悪亜美は、モデルの仕事を通じて、次第に居場所を失っていった。自分がちょっと可愛い様子を見せれば、みんなが熱狂する。みんなが亜美のことを好きだという。でもそう言われれば言われるほど、本来の性悪亜美の部分は影に押し込められていかざるを得ない。
ストーカー男は、そんなモデルとしての可愛い亜美ちゃんが意識する、ファンの目の象徴だったのだろう。どこにいても、どんな時も、じっとりと自分を刺し貫く視線。いつ正体を写真に撮られてばらまかれるか、心休まる暇もなかったのだと思う。亜美は、性悪な自分がバレれば、仕事を、今の自分を失ってしまうと思っていたから。
そんな視線から、性悪亜美はいつも逃げ回っていた。逃げて逃げて、可愛い亜美ちゃん像で塗り固めたお城の中に逃げ込んで、震えていた。
でも亜美が八方破れなら大河は三十二方破れくらいである。誰の目も気にしない(北村以外)。気に入らなければ吠える、噛み付く、引き裂く。亜美が苦労を重ね、計算して取り繕っている体面なんて、ハナから全く気にしていない。亜美の態度にむかつきまくった大河は、そんな可愛い亜美ちゃんのお城を、あっさりとぶちこわしてしまった。
でも、お城は中に居る者を守る鎧であるとともに、囚われの性悪チワワを閉じ込める檻でもあった。ぶち壊された檻から出ることができたから、ストーカーに噛み付くこともできたのだ。恐怖の涙に濡れながらも。
檻から出て、初めて自分の現実と戦った亜美の目の前に、竜児がいた。亜美にとって最も与し易い相手のはずの、同年代の男子でありながら、自分の思い通りにならない存在。多分初めて、亜美が対等と思えた同年代の男子。……これは、一種の刷り込みだったのかもしれない。殻を破って、目を開いた亜美の前に、彼がいたのだ。
でも、この時すでに亜美の入り込む余地は……。うう。
最終巻、亜美の決着はどういう形でついてるんでしょうね。楽しみなような、怖いような。
【このエントリにはタグがつけられていません】
投稿者 文月そら : 21:48 | コメント (0) | トラックバック