« 2011年4月27日 | メイン | 2011年6月23日 »
2011年5月20日
■[書籍]【ネタバレ感想】俺の妹がこんなに可愛いわけがない8巻
事前に例のネタバレ騒動を踏んでしまい、発売日まで心理的に物凄い葛藤を生じた挙句、発売日には店頭で冷や汗流しながら立ち読みまでして確認しましたが、結果的に豪快なミスリードでしたね……。見事に釣られました。
張っている内容自体には全く嘘がなかっただけに、あの釣り師は一流だったと言わざるを得ません。
ということで、以下ネタバレです。
騒動を全くご存知ない方もおられるかと思いますので、一応参考まで。
http://yaraon.blog109.fc2.com/blog-entry-1792.html
これだけ見ていると、絵に描いたような、かませ犬展開に見えるんですよね。
それだけは絶対無いと思っていたんですが、活字でみせられると焦りました……。
さて、内容ですが、黒猫が一体いつの時点からこの計画を考えていたのか分かりませんが、彼女の決断を見て、かつて桐乃があやせたち普通の友達も、黒猫たちオタクの友達も両方捨てることはできない、と言ったことを思い出しました。
つまり黒猫は、友達としての桐乃も、恋人としての京介も、そして友達としての京介、更には沙織も含めた友達全体の関係まで含めて、全てあきらめないために、これを計画したのだろうということです。お前らホント似たもの同士だな……。
まあなんというか、黒猫の意図は分かるんですよ。桐乃が心から納得しない以上、この関係を続けることはできないと。……にしても潔癖すぎるというかなんというか。
ある意味で、黒猫はわざわざアドバンテージを放棄したということもできます。ラスト付近で麻奈美も似たようなことを言っていましたが、黒猫が一時恋人の立場に収まり、別れることで、この超鈍感男に、自分の気持ち、周囲の気持ち、問題の所在を認識させたわけです。
つまり、自分のどうしようもないシスコンぷりと、周囲を傷つけるレベルの鈍感ぷりについて。
そして、自分に恋人ができるということが、自分と周囲、特に桐乃ににどういう影響を与えるかを。
これは桐乃についても言えて、兄に恋人がいる状態というものの予行演習として、これ以上ない経験をつめたことでしょう。経験があれば、シミュレーションができる、心の準備ができる。
いわば、あの人騒がせな兄妹に、予防接種をさせたようなものです。
別に黒猫は、恋人という立場のまま、時間をかけて桐乃をなだめていくこともできたはずです。これが例えば麻奈美だと、これまでの経緯もあり、桐乃の心情的に難しかったでしょうが、桐乃は根本的に黒猫を嫌いになれないはずですから、そういう戦略もとれたし、そのほうが楽だったはずです。
でも黒猫は、それを潔しとしなかった。
なぜか。
……それは推測するしかないですが、恐らくは京介には『自分の恋人』として、桐乃には『兄の恋人』として、自分のことをちゃんと選んで欲しかったんだと思います。なあなあの、なしくずしでは、彼女のプライドが許さないのでしょう。めんどくさい女なのです、黒猫。そこが可愛いところですけど。
自分で告白して、自分で関係を終焉させた以上、黒猫が自分から告白していくことは、もうないと思います。黒猫は理屈に合わない行動は、とれないタイプだからです。
ここで京介が本質的に麻奈美に逆らえないことが強調され、ラスボス臭を漂わせながら存在感を際立たせてきたのは恐ろしいところです。
『いつかは京介に恋人ができる』という状況を本人、当事者を含め、全てのプレイヤーが認識したことで、レースは再び、混戦になったからです。
さて、今巻での黒猫は、損得勘定では動けず、自分の設定に縛られる性格が、よく表れていたと思います。これまでも、邪気眼キャラは、四角四面な自分を打破する手段として使っている節がありましたが、今回は露骨でしたね。『仮面』をかぶれば、緊張でガチガチの初デートでも、明るく振舞うことができる。だから、あそこは神猫でないといけなかったのです。
そういえば、ご丁寧に仮面まで持ってましたね。黒猫めんどかわいいよ黒猫。
状況がカオスになって終わってしまったので、読後のカタルシスはいまいちでしたが、面白い展開だと思います。次巻も楽しみです。
【このエントリにはタグがつけられていません】
投稿者 文月そら : 01:44 | コメント (0) | トラックバック