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2009年2月22日
■[書籍]もうすぐとらドラ完結するらしいからそれまでに再読する試み その2 Tweet
はい、では第二回目いきます。ネタバレしまくりなので、どうかご注意を。
今日はチャーハン食い終わってから、翌朝登校時実乃梨と出会って竜児が置いていかれるまで。
まずは、チャーハンのシーン。
ひととおり食い終わって人心地ついてから、大河は、さぞかし驚いたんだろうなあと思う。
多分大河は、これまで他人から無償で何かをしてもらうことは、ほとんどなかったんじゃなかろうか。
無論生活費は提供されているし、住環境だって、もしかするとあの山のような衣類だって、あの父親から提供されたものかもしれない。
でも、そういうのと、竜児がしてくれたことは違う。あれで大河は、それなりに常識をわきまえているので、深夜木刀持って襲撃をかけるような自分が、(討ち漏らせば(笑)
)通報され、今後も竜児に敵視されるであろうことは覚悟して臨んでいるはずである。
それだけ無茶苦茶やらかした自分を、竜児はちゃんと「見て」、彼なりに大河にとって必要だと思うものを提供してくれた。チャーハンもそうだし、恥ずかしい恋愛話もそうだ。
後のクリスマスエピソードにおいてはっきりするが、大河はいつだって誰かに見ていてほしかった。竜児のくれたものは、父親からのそれのような金額と量で計ることのできるものじゃない。彼はあの夜、大河を見ていたし、大河もその眼差しを感じたはずだ。しかも、打算なく。……その計算のなさは、竜児お前頭悪いんじゃないかと思うほどである(笑)
木刀で夜襲してくる襲撃犯を手料理で歓待して帰すなぞ、全くもってお人よしにもほどがある。そもそもそんな対処で、普通襲撃犯は納得しないし帰らない。そんな底抜けのお人よしが竜児なのだ。
だから大河は、竜児の言うことを信じた。
ラブレターには中身が入っていなかったこと。
封が開いてしまったのは偶然だったということ。
そんなザマを北村に見られなくてよかったということ。
竜児がこの事件を決して北村に話したりはしないこと。
そして最後に――竜児が顔に似合わぬ、いい奴だということを。
だから――これは多分、この時点では意識的にではないけど――身近に置こうとした。敵ばかりの世界で、背中を見せられるかもしれない存在を見つけたから。
そのためのポジションが『犬』ってあたりが、大河の哀しい不器用さを象徴しているとも思うけど。
そしてこの事件は、高須家にひとつの痕跡を残した。
襖に咲いた薄桃色の便箋の桜の花。
それはいつまでも竜児と大河が本当の意味で出会ったこの春の夜を語り続けるはずで、この物語の終わりに、これがどんな意味を持つのか。非常に気になる。
特にやっちゃんにとって。
そして、大河の部屋を初めて訪れるシーン。
でかい部屋のでかいベッドに、まるで放置された人形のように転がる大河。
インコちゃんという存在が今まで非常に謎だったんだけど、このシーンでそんな大河を見つめる竜児の視線をなぞっていると、なんとなくインコちゃんが高須家の一員になった様子が見えてきた気がする。
要するにきっと、インコちゃんはペットショップ中でぶっちぎり一番ぶさいくな生き物だったんだろう。当然、店員からの愛情も受けられず、適当に世話をされ、新聞紙やらエサやらフンやらにまみれて、鳥カゴの床に、ゴミのように転がっていたんじゃなかろうか。
多分、竜児はそういうのは放っておけないのだ。
これは、綺麗ごとの話ではない。前回もお話したように、竜児とやっちゃんは、互いに助け合ってこれまで生きてきた。竜児にとって、生活力のないやっちゃんを卓越した家事能力で助けるというのは、生きがい、というより、竜児という人間の価値そのものだと信じているんじゃないかと思う。
本当に小さな子どもの頃、竜児は働くことができなかった。簡単な家事だってできなかった。無論お金を稼ぐこともできないし、疲れ果てて帰ってくる母のために、できることは何もなかった。そんな口惜しさや、常に先行きの薄暗い二人の生活と、戦うための力として、竜児は家事能力を身に着けていったんだと思う。
竜児にとって誰かを世話し、役に立つということは、生きることそのものだったのだ。
だから竜児は、本当に打算なく、ほとんど反射的に、大河に手をさしのべることができた。
そんな『白い』手が、大河には必要だったんだと思う。
……こんな調子でやってたら、絶対に最終巻発売に間に合わないことに気付いた……。
投稿者 文月そら : 2009年2月22日 04:15
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