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2010年11月10日
■[感想/書籍]「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」7巻感想その2
昨日のエントリ(リンク先ネタバレ)について、えむけーつーさんから言及をいただきました。これはそのお返事をかねてのエントリです。
当然ネタバレしかありませんので、原作未読の方は回避推奨です。
えむけーつーさんにいただいた言及はこちら。
……なるほど、桐乃と京介に血縁がなく、そのことを桐乃しか知らないと仮定すれば、現状の桐乃と京介の温度差についても綺麗に説明がつきますね……。
非血縁説については、何度か目にはしていたものの、ずっとスルーしてきました。おそらくひとえに黒猫に不利な話であるせいです……。でも、これは無視できなくなっちまいましたね。
何かのタイミングで(そういえば桐乃はプロモデルであり、あの年で仕事をしていますから、契約の時に戸籍を取り寄せた可能性があります)、真実を知った桐乃。大好きだったお兄ちゃんと、実は血の繋がりがなかった。距離のとり方がわからず、挙動不審になる桐乃。その妙に色気づいたような対応に、京介は兄として気持ち悪さを感じて、何かの暴言をはく。これが今巻の
「あのときは気持ち悪いみたいな顔したくせに! なんでいまさら! いまさら! そんなこと言うのよ!」
という台詞につながっていると考えられます。
傷付いた桐乃は、京介を露骨に拒絶するようになる。京介はわけもわからないまま、これまで仲の悪い兄妹の関係に甘んじてきた……。ううん。すげえ綺麗にはまるなあ。
「大好きだったお兄ちゃん」の部分がひっかかる方もおられるかも知れませんが、大体、お互いに大嫌いってことは、お互いに強い関心を持っているということの裏返しでもあります。何かの事件が起こる前は、物凄く仲が良かったんじゃないかとも考えられるわけです。実際、関係が修復されてみると、京介の主観はともかく、第三者からみたらベタベタ湿度の高い兄妹関係になっているわけですから、そういう可能性は高いといえるでしょう。
また、京介に桐乃が生まれたころの記憶があることが、この非血縁説の障害となっていますが、これもこう考えればクリアできます。すなわち、『妹が実子で、兄のほうが養子、あるいは連れ子』であればよいのです。
うひゃあ。なんだこの嵌まり様。もう非血縁としか考えられなくなってきました。
さて、桐乃と京介に血の繋がりがないとすると、俄然桐乃エンドのハードルが低くなってくるわけですが、黒猫派たる私の反論としては、以下の二点があります。
まず一つ目は、京介自身のモラルの問題です。たとえ事実として桐乃と血縁がなかったとしても、今さら京介は桐乃を女としてみられないんじゃないか、ということです。京介はこれまで、心の底から桐乃を実の妹だと信じてきたわけで、その強固な意識は変えようがないんじゃないかと思います。事実はどうあれ、京介にとって、桐乃は大事な妹であり、それはもはや動かせないと思うのです。
もう一つは、昨日のエントリでも少しお話しましたが、最後のこの描写です。
この告白から数日後――
俺と黒猫は、恋人になった。
この『数日後』がなかったら、もっと不安になってたんですよ。確かに、物語の原則として、先行提示した情報は、覆すのが定石ですから。
でも、京介はこの場では返事をしていない。これはつまり、この数日間に、まだ開示されていない物語があるということです。その帰結として、京介は黒猫と恋人になることを決断した。それだけは、確約されているのです。
……まあ、それでもその後、最終的にどうなったかはわからないわけですけど。
ということで、黒猫派としても結構ゆらいでおります。そういう意味で今回MK2さんの提示してくれた図式の綺麗さは救いです。すがりたい。
とまあ、こういうような話を書いていたところ、necolaus.netさんからトラックバックをいただきました。ありがとうございます。
なるほど、確かにモラルを論拠にせずに解釈すると、色々苦しいですよね……。タイトル的にもメインヒロインが桐乃であるのは間違いないわけですし。
でも一つだけ反論させてください。
黒猫は、桐乃を奮い立たせるため、敢えて自らを犠牲にする覚悟を以て先に告白したのではないか
これは違うかもしれません。
7巻の黒猫のこの言葉が根拠です。
「結局私は、ある人を見習って、自分の欲求に素直になろうと決めたの。思い切り、欲張りになろうと決めた。……きっとあの女ならこんなとき、どちらかを諦めたりはしないでしょうから」
ここで黒猫は桐乃も京介も両方取ると宣言しているからです。この決意はホンモノだと思います。
【このエントリにはタグがつけられていません】
投稿者 文月そら : 22:29 | コメント (5) | トラックバック
■[感想/書籍]「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」7巻感想
いやびっくりですよ。
何がって、あの例の事前ネタバレでも流れた一番最後の展開のことですけどね。
あんまりびっくりして、死んでたブログが生き返りました。
以下、ネタバレ満載でおおくりしますので、未読の方は回避推奨です。
今回はまた随分とバランスを崩してきたなあ、というのが大きな印象です。
このシリーズはこれまで、恋愛関係にせよ、友人関係にせよ、家族関係にせよ、決定的なひと言は言わずにまわしてきました。まあ、黒猫がキスはしてましたけど、あれも「呪い」という言い訳付きでした。
誰もが自分の好意を相手に伝えることなくここまできたのは、お互いが臆病という言い訳の元、現状に甘んじていたから。何も言わなければ、少なくとも現在のポジションを失うことはないから。それが、京介を中心としたラブコメシステムを支えていました。
最初に桐乃がそのバランスを崩してきたのは意外でした。二度の狂言彼氏騒ぎ、明らかにどちらも、京介の気持ちを量るためにやってますからね。正直、桐乃の気持ちというのは、妹としての好意にとどまるはずだと思っていたので、ここまでの行動に出てくるとは……意外でした。
作中で桐乃自身も言っていますが、この桐乃の行動を触発したのは、麻奈実と黒猫の存在です。
「自分はっ! 自分はっ! 地味子とかっ……あの黒いのとかといちゃついてるくせに! 勝手なこというなっ!」
でもって、この次に、桐乃は気になることを言っています。
「あのときは気持ち悪いみたいな顔したくせに! なんでいまさら! いまさら! そんなこと言うのよ!」
『あのとき』……普通に考えれば、7巻前半の京介とのデート、最後の口論のことを指すような気がしますが、良く考えてみるとちょっとおかしい。
「せっかく俺が嫌々協力してやったっつーのによ」
「おまえの彼氏役なんざ、もう二度とごめんだね」
桐乃を怒らせたと思われる京介の台詞はこのあたり。ウザ顔はしていそうですが、嫌悪感をみせているシーンではなさそうです。
更に『いまさら』という言葉も気になります。『いまさら』という言葉には、もうある程度古い過去のことで、しかも取り返しがつかない後悔のニュアンスがあると思います。……どうも、あの未回収の伏線『押入れの中のまだ見せられない秘密』がからんでいるような気がします。
今回、『妹の彼氏』という存在をテーマに、兄妹がぶつかったわけですが、恐らく次は、この構図がそのまま反転するものと思われます。すなわち『兄の彼女』。桐乃のほうについては、恐らく最後の長電話で、これからする黒猫の告白について聞かされていると思うので、ある程度は冷静に対処してくると思いますが、問題は麻奈実ですね。
京介にとって麻奈実とはどういう存在なのか。京介が常に軽く扱ってきた麻奈実ですが、それでいて麻奈実に彼氏が、なんていう話になると不機嫌になったりして、独占欲だけは発揮してきました。
思うに、京介にとって麻奈実というのは、妹かつ姉のような存在だったんじゃないかと思うんですよね。今回見せた桐乃への執着と近い意味で、麻奈実にも執着してきた。でも麻奈実のほうはそんな気持ちからは一歩も二歩も踏み込んでいるわけで……このすれ違いが、トラブルを生まずにはおかない。これに桐乃との過去もあわせて、京介はこれまでのツケをまとめて払わされる、手痛いしっぺ返しをくらうことでしょう。……あやせと麻奈実とのつながりが、今回わざわざ示唆されたことも考えると、更に恐ろしいことになる可能性も……。
この告白から数日後――
俺と黒猫は、恋人になった。
数日後っていうのがポイントですよね。京介はこの場ではOKしていない。恐らくこの間のすったもんだが、次巻で描かれることでしょう。
――まあ、黒猫派としては願ってもない展開なわけですが、あまりにも都合が良すぎて怖い面もあります。この期に及んで最終的に黒猫振ったりしやがったら京介覚悟しやがれって感じですよ。
ようやく執筆が始まったかどうかというところであるようなので、まだ先でしょうけど、今から次の巻の発売が待ち遠しくてたまりません。
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投稿者 文月そら : 01:34 | コメント (2) | トラックバック