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2011年4月27日
■[感想/書籍]神様のメモ帳1〜6巻
三巻まで読んでみて、これは面白いと思い、最新六巻まで一気に読了しました。
乱暴に言えば、ゴシックと新宿鮫が悪魔合体して探偵は12歳美少女ですという感じのお話です。
毎回様々な、割としゃれにならない揉め事が起こります。高頻度で暴力沙汰です。
でも根底に流れるのは、誰かを待っている人と、待たせている人のすれ違い、あるいは再会の物語。
真実は往々にして救いではない、ということが繰り返し語られます。
活躍するのは概ね男であり、物語上輝くのもほとんど男という、男性向けラノベとは思えないチャレンジングな仕様ですが、お勧めできる内容だと思います。
以下、ネタばれありです。
ただ正直、最新刊まで読んでみてのテンションは、三巻までと比べて少し下がり気味です。
少佐もヒロさんも四代目もテツ先輩も、非常にいいキャラクタで、巻を追うごとに好きになってゆきます。
……つうかこの作品は男が魅力的すぎる。
アニメ化にあたり、物凄い勢いでホモ同人が乱立しそうな予感すらします。
主人公の鳴海も、女性関係での他人事ながら殴りたいほど腹が立つ鈍感ぶり以外は、魅力的なキャラクタです。
それなのに、なんでテンションが下がり気味なのか。
それは、四巻以降、彩夏の扱いが酷すぎるからです。
鳴海にとって彩夏は、はじまりの唯一人であり、世界の扉そのものであったはずです。
彩夏と知り合い、園芸部に、ラーメン屋に誘われなければ、何も始まらなかった。
ただ一人でグチグチくすぶっている、一巻冒頭時点のうっとおしい鳴海のままだったはずです。
彩夏は一見社交的ですし、周囲のあらゆる人とうまくやっているように見えてしまいます。ほっといても問題がないように思われがちでしょう。
でも実のところ彼女のそういう姿は、周囲から期待された役割を演じているだけで、内面的には離人症に近い状態なんじゃないかと思われるほどです。
記憶を失ってからは特にそうだと思います。前より一層、自分が本当に何を考え、何をしたいのか、わからなくなっているんじゃないかと。
そして、物語上の立ち位置は、現在、ほぼモブになっています。
園芸委員会での接点もなくなり、また事件捜査にも関われない以上、自然なことではありますが……。
積極的な分、メオの方が目立つくらいです。
で、少なくとも鳴海は、彩夏がそういう性格だということを知っているはずです。
見た目よりもずっと危うい。むしろ登場キャラクタの誰より爆弾をかかえている。
何かの拍子に記憶を取り戻しでもしたら、発作的に何をするかもわからない。それも知っているはずです。
それなのに、なぜあんなに放っておけるのか。
一度完全に失って、あんなに苦しんだくせに。
ぞっとしたのが、最近、鳴海とアリスが二人きりで事務所を開き、そこで生活することを応援するような発言を、彩夏がし始めたことです。
それまでは、無防備なアリスを諌める(=二人の間に割って入る)立場だったのに。
単純に『アリスと鳴海の友人としての彩夏』という役割を演じたんだと思うのですが……これ、かなり高水準で自分を見失ってしまっているんじゃないか。しかも、自分から二人に話を振っているし。
……何か、彼女の中で、マズいことが起こっている気がして仕方がありません。
そういうことを考え出すと怖すぎて、アリスと鳴海のラブコメシーンも全く楽しめません。二人とも彩夏ほっといて能天気になにやってんだと思ってしまいます。
このへんは多分私がアリスに全く感情移入できないのも悪いんだろうとも思うんですが……。俺妹の桐乃もそうですけど、どうも『素直になれなくて不器用なあまり横暴になる』キャラクタが苦手なんですよね……。視界から外したくなってしまう。
まあ、小学生のアリスにそんな配慮を求めるのは酷な話ですけど。
作者さんが単に何にも考えていなくて、成り行き上彩夏が空気ヒロインになったというだけなら(別ベクトルで腹は立つものの)まだいいんですが、わざわざ三巻で結局彩夏の記憶を戻さなかったことを考えると……何か仕込んでいるんだろうなあ。
考えてみると彩夏の兄、かなりいろんな主要人物にかかわりの深いキャラクタのはずなのに、あれ以降全く出てこないし。
ここまでの丁寧な話作りから考えても、何かありそうです。
ということで、怖がりながら続刊を待ちたいと思います。
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投稿者 文月そら : 02:06 | コメント (0) | トラックバック