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2011年12月23日
■[感想/書籍]貝木泥舟というロマンチスト(化物語『恋物語』ネタバレ)
いやー。見事に騙されましたわ。
西尾維新氏が読者の裏をかくのが大好きだということを考えれば、戦場ヶ原が語り部だなんて予告をくつがえしてくることくらい予想しておくべきでした。
この件から私が学ぶべきことは、経験から学べ、お前はまよいキョンシーの経験を生かすべきだった、ということでしょう。
そんなこんなで冒頭からしばらく、貝木にあざ笑われている間中ケラケラ笑っていた訳ですが、読み終わってみればその貝木のイメージが180度転回してひっくりかえってしまいました。
面白かった。
語れば、言葉にすれば、全ては嘘になってしまう。
それは絶対的な真実です。
例えば私はこの作品をとても面白かったと思ったけれども、全部が全部一言一句句読点の使い方に至るまで全てが気に入ったかというとそういうわけではない。
ここでいう面白かったというのは総括的な感想であって、ディテールのレベルでは好きではない部分だって存在している。
あるいは解釈と見方を変えれば、この作品は嫌いだという感想すら語ることが可能です。
かように言葉というのは脆い物です。
でまあ、貝木は作中、嘘だ嘘だと連発しながら物語っていくわけですけど……。
撫子に貝木は言います。
かけがえのない大切なものが嫌いだと。
かけがえのある大切なものであるお金が大好きだと。
……これって要するに、かけがえのない大切なものを、大切だと言葉にしてしまうことで、嘘になってしまうことが嫌なだけなんじゃないですかね。
だから、ひたぎのことを助けたかったとも言わなかったし、ましてや愛していたなどと言うはずもない。
そうだとしたらもの凄いロマンチストですよね。
阿良々木くん以上だ。
今回は阿良々木くんコテンパンですね。貝木にあらゆる意味で負け切った感がある。
ひたぎとの関係においてすら……。
『今も昔も、あなたは私に嘘をついたことはなかったわ』に至るやりとりとか、『敵』に戻るための二人の間での線の引き合いが、何か美しくすらありました。
こういう大人の貫禄を見せつける展開、好きなんで。
まあ阿良々木くんはまだまだこれからの少年……いや、青年ですからね。
――とまあ、そんな感じで貝木に見事に感情移入させられたと思ったら、あのラストですよ……。
どういうことなの……。
仮に花物語の時点での貝木が幽霊だったとするならば、沼地蝋花、貝木泥舟と、比較的数少ない登場人物の2人までが幽霊だったことになるんですが……。
でも死んでいてほしくないな……。
特に、なんか意外なほど仲良しっぽい忍野との会話が見てみたい……。
それにしても面白かった。
セカンドシーズンで一番好きな花物語と同じくらい好きです。
……あ、もちろんこれは嘘じゃないですよ。嘘じゃない部分だらけです。
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投稿者 文月そら : 01:29 | コメント (0) | トラックバック