Top > 感想 > 書籍

2012年10月26日

[感想書籍]「マグダラで眠れ」 「マグダラで眠れ」

 「狼と香辛料」で有名な支倉凍砂さんの最新作「マグダラで眠れ」のご紹介です。
 前作が交易をメインにした『旅と商人としっぽの物語』であったのに対して、今回は『神と錬金術師とケモミミの物語』とでもいいましょうか。
 先日2巻が発売されたのですが、これが抜群に面白かった。
 錬金術とは言っても、鋼とか焔とか等価交換とか真理の扉とかそういうのではなくて、かつて本当に実在した、科学の先祖としての錬金術。中でも金属精製をメインとした冶金術です。
 鉛の精製方法とか、そこから貴金属を取り出す方法とか、更には鉛の鉱山であっても、金銀の含有量こそが採算性を決めるとか……。なんせ、そんな方面の知識なんぞありませんから、提示される蘊蓄のいちいちが興味深かったです。相変わらずの綿密な取材と、それに基づく緻密な世界構築には頭が下がります。
 面白いのは、香辛料の時にロレンスが所属していた商人コミュニティと錬金術師とは、全然違う立場なんですよね。商人は良くも悪くも町の秩序・経済・日常を司る存在であるのに対して、錬金術師は混沌・禁忌・非日常を表す存在なんですね。
 そりゃまあ、神様の存在が一般的に信じられている世界において、その神様の啓示とは別の法則や秩序の存在を、禁忌に踏み込むことも辞さず求め続ける人間というのは、さぞかし普通の人にとって気味の悪い存在であることでしょう。作中での主人公クースラの扱われからからも、大釜にあやしげな薬を混ぜ合わせてよからぬ術をたくらむ魔女と区別がつかないんだろうな、ということがよく伝わってきます。
 クースラは科学者のはしりであり、クールで利己的で理性的な存在として描かれていますが、もう一方で、どうしようもなくロマンチストでもあります。まあ本当に理性的な人はオリハルコンなんて追い求めないし、姫を守る騎士としての自分なぞ夢想したりはしません。
 それに対してヒロインであるフェネシスは、虐げられてきたわりに、やけに素直で世間知らずで何色にでも染まりそうな、文字通り真っ白な修道女。しかしあまり口を開かず、クースラのからかいにぶんむくれながらも錬金術の修行に打ち込む姿はかなりの頑固者であることも示しています。
 冶金術の不思議さ、面白さと、互いに別の意味で社会からはみ出し、忌み嫌われてきたにも関わらず、妙に純粋なところのある二人の行く先。どちらも興味深く、続きが楽しみです。

 2巻はダマスカス綱をめぐるお話でした。日本の古刀、中国の青磁なんかもそうですが、現代では製法の失われた遺物、ロストテクノロジーの浪漫たるや半端ないですな。
 必ずしも、過去より未来が優れているわけではない。そんなことをキュンキュン思い出させてくれる一冊でした。

【このエントリにはタグがつけられていません】

投稿者 文月そら : 22:54 | コメント (0) | トラックバック

2012年9月 8日

[感想書籍]俺の妹がこんなに可愛いわけがない11巻ネタバレ感想 俺の妹がこんなに可愛いわけがない11巻ネタバレ感想

 桐乃が兄に幻滅したという大まかな形そのものは、事前の予想通りでしたが、いやこれ麻奈実の犠牲でかすぎるだろ……というのが過去編を読んだ感想です。

 麻奈実は、恐らくは麻奈実と桐乃、二人のヒーローだった京介が、等身大の当たり前の人間であることを許しました。本来、母親なり、祖母なりが担うべき『ありのままでいい、つまらない人間でもいい』という絶対的な存在の肯定。そんな達観した立場に、中三にして立たされた麻奈実が痛々しかったです。
 これで結局、京介がヒーローを辞めた代償として、麻奈実は京介の保護者としての立場から降りられなくなってしまったんじゃないでしょうか。
 3年前の描写をみると、京介が麻奈実におばあちゃんネタを振ったとき、麻奈実も京介におじいちゃんと返す、応じネタをもっていました。しかし、現在では京介が麻奈実をおばあちゃんと呼ぶばかり。一方通行になってしまった関係に、いびつなものを感じてしまいます。

 あくまで私は黒猫派であり、黒猫エンド以外は見たくないんだけども……抱擁・肯定・号泣。みっともなさも情けなさもすべてを受け入れて「好きだ」とまで言ってくれた麻奈実をその後放置とか……ちょっとどうなんですかね京介、男として。

 なんでこうまで麻奈実に不憫さを感じてしまうかというと、実は黒猫も、似たような立場に立たされているからなのかもしれません。一度は『京介の彼女』の座を射止めながら、みんなが幸せになれるように、京介と桐乃の気持ちをおもんばかって身を引いた黒猫。割と麻奈実の場合と相似形なんですよね。
 こうして、やたら京介(及び桐乃)に甘いハーレム状況が、麻奈実と黒猫の犠牲の下、成立したのです。
 ……というか、どうしてもこういうイヤな解釈がちらついてしまうんですよね。
 最終巻開始時点で、京介が誰でも選べる状況を作るために、麻奈実は保護者であり続けることを、黒猫は身を引き別れることを強いられたんじゃないかって。
 だって、二人とも、あまりにもエゴがなさすぎるじゃないですか。

 これで麻奈実か黒猫が選ばれないとするならば、彼女たちは全くの自滅としか言いようがなく、加奈子と麻奈実のあのやりとりが本当にシャレですまなくなってしまうなあと不安に思うわけです。

「加奈子に言わせっと、野良猫とかゆーアホは救いようのないバカっすね」

「あはは。じゃあ、わたしもバカだね」

 思いやりのある人間ほどバカを見るような結末にはなってほしくないと祈るばかりです。

 ラストシーンはちょっと面白かったですね。麻奈実・加奈子・黒猫・あやせが、かわるがわる、自分と京介、そして桐乃の関係についての所信を表明する様は、まるで営業が客先に競合プレゼンしているみたいだと思いました(笑

 さて、次はいよいよ最終巻。京介は誰を選ぶのか、とにかく最低限きっちり決着をみせてほしいと思います。

 京介が誰かに告白をする。でもその相手は誰だか分からない……とかいうのだけはやめて下さいね!

 そういえば、どう考えても某シンデレラなニートアイドルが元ネタと思われる新キャラ、櫻井秋美さん。
 秋の、桜。
 秋桜といえば、コスモスですね。
 コスモスの花言葉は『少女の純真・真心』だそうですよ。……なんか振られるためだけに出てきたような感じもする彼女ですが……これまた不憫すぎる。

【このエントリにはタグがつけられていません】

投稿者 文月そら : 02:06 | コメント (0) | トラックバック

2012年9月 2日

[感想書籍]境界線上のホライゾンV<上>境界線上のホライゾンV<上>


 昨日の時点では左のメニューバーがまるっと消えていたのですが、無事に不具合が直りました。
 ということで、ホライゾンの話でもしましょうかね。

 アニメの二期も好調でなによりですわ。
 正直な話、独特すぎる世界を持つホライゾン、というか川上氏の作品群がここまで広く受け入れられる日が来ようとは思いませんでした。
 先日の夏コミでも、ホライゾンサークルが目白押しでしたし。
 ……残念ながら、ミリアムの本はほとんど見あたりませんでしたが。(既刊のみ一冊確保)

 で、盛り上がっている中の五巻上発売。思っていたより薄くて驚きました。
 恐らく業界でも屈指の生産力を誇る川上氏でも、DVDブルーレイの特典小説は100頁を超え、ドラマCDやらコミック、果てはフィギュアにまで小説をつけていて、近々巨大な設定資料集も出るとのことですので、さすがに戦力の集中を欠いたということでしょうか。
(※五巻上は702頁)

 内容については……なんつうか森君が出てきてから、こいつのエピソードは一体どこにたどり着くんだろうかという点が気になって仕方がありません。
 某所で玄武との関連を指摘されていましたが、なるほど玄武は蛇と亀。触手的な意味でもタートルネック的な意味でも適役と言えましょう。しかも確か玄武って交尾中の暗喩があったし、ナチュラルボーン卑猥な森君にはうってつけといえましょう。
 まあ、異族の多い川上氏の作品ですけども、まさか触手知性体が登場しようとは……。直政とのフラグをやたらとアピールしては硬くなって震えていますが、出てくる度必ず卑猥というのはどういうことなの……。というかアニメに出せるのコレ……。

 直政との関係が進展するとは思えないし思いたくないが、何もないなら出てこないだろというのが頭から離れず困ります。

 

 予×ミリアム的な意味では全く何もありませんでしたね。
 外に出て買い物をする三人の姿が双嬢に目撃されて、ナルゼのネタストックに入っただけです。セリフすらないんでは妄想のしようがないです。
 ただ、ミリアムが部屋の外に出ている姿を描写されたのは初めてだと思うので、そういう意味では貴重かも。

 近々、おそらく本能寺あたりではミリアムのイベントが進行するんじゃないかと思いますので、今回は出番が少なかったのかなと思います。

 ラストで、いるのかいないのか気をもんでいた真田・信之が突然登場してでっかい爆弾を炸裂させましたが、これからどうなるのか、一層楽しみです。

【このエントリにはタグがつけられていません】

投稿者 文月そら : 01:32 | コメント (0) | トラックバック

2012年4月12日

[感想書籍]俺妹10巻……。俺妹10巻……。

俺の妹がこんなに可愛いわけがない10巻、読みましたよ。

うーん……。
まあ、ギャグは面白かったです。
相変わらず脇の甘い京介がいろんな人につっこまれまくる様とか。

でもなー。
ちょっとハーレムにもほどがあるというか。
世界があまりにも京介に劇甘すぎて、ちょっとついていけないというか。

ひとつにはPSPで全員ヒロインになるゲームとか出しちゃったのがまずかったのかもしれないですね。
変に希望を持たせてしまったから。
だからこんな、全方面外交みたいな、全てのヒロインのファンに配慮したような展開に行き着いてしまったのかも。

まあ、いよいよ過去バラシに入るみたいなんで、この先には厳しい現実があるのかも知れません。
あとがき曰く、今回は全三巻の第一巻だそうなので。

終盤、タイトルの『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』を京介が口にしたあたりで、ああ、最後の展開の口火がきられたんだなと思いましたよ。

まあ、ここまでヒロイン増えちゃうと、鈍感主人公を続けるにも無理がある(実際今回はかなりひどかった)ので、さすがにそろそろ決着つけてくれることでしょう。

早く12巻が読みたいです。

【このエントリにはタグがつけられていません】

投稿者 文月そら : 01:28 | コメント (1) | トラックバック

2011年12月23日

[感想書籍]貝木泥舟というロマンチスト(化物語『恋物語』ネタバレ)貝木泥舟というロマンチスト(化物語『恋物語』ネタバレ)

いやー。見事に騙されましたわ。
西尾維新氏が読者の裏をかくのが大好きだということを考えれば、戦場ヶ原が語り部だなんて予告をくつがえしてくることくらい予想しておくべきでした。
この件から私が学ぶべきことは、経験から学べ、お前はまよいキョンシーの経験を生かすべきだった、ということでしょう。

そんなこんなで冒頭からしばらく、貝木にあざ笑われている間中ケラケラ笑っていた訳ですが、読み終わってみればその貝木のイメージが180度転回してひっくりかえってしまいました。

面白かった。

語れば、言葉にすれば、全ては嘘になってしまう。
それは絶対的な真実です。

例えば私はこの作品をとても面白かったと思ったけれども、全部が全部一言一句句読点の使い方に至るまで全てが気に入ったかというとそういうわけではない。
ここでいう面白かったというのは総括的な感想であって、ディテールのレベルでは好きではない部分だって存在している。
あるいは解釈と見方を変えれば、この作品は嫌いだという感想すら語ることが可能です。

かように言葉というのは脆い物です。

でまあ、貝木は作中、嘘だ嘘だと連発しながら物語っていくわけですけど……。

撫子に貝木は言います。

かけがえのない大切なものが嫌いだと。
かけがえのある大切なものであるお金が大好きだと。

……これって要するに、かけがえのない大切なものを、大切だと言葉にしてしまうことで、嘘になってしまうことが嫌なだけなんじゃないですかね。
だから、ひたぎのことを助けたかったとも言わなかったし、ましてや愛していたなどと言うはずもない。

そうだとしたらもの凄いロマンチストですよね。
阿良々木くん以上だ。
今回は阿良々木くんコテンパンですね。貝木にあらゆる意味で負け切った感がある。
ひたぎとの関係においてすら……。
『今も昔も、あなたは私に嘘をついたことはなかったわ』に至るやりとりとか、『敵』に戻るための二人の間での線の引き合いが、何か美しくすらありました。
こういう大人の貫禄を見せつける展開、好きなんで。
まあ阿良々木くんはまだまだこれからの少年……いや、青年ですからね。


――とまあ、そんな感じで貝木に見事に感情移入させられたと思ったら、あのラストですよ……。

どういうことなの……。

仮に花物語の時点での貝木が幽霊だったとするならば、沼地蝋花、貝木泥舟と、比較的数少ない登場人物の2人までが幽霊だったことになるんですが……。

でも死んでいてほしくないな……。
特に、なんか意外なほど仲良しっぽい忍野との会話が見てみたい……。

それにしても面白かった。
セカンドシーズンで一番好きな花物語と同じくらい好きです。
……あ、もちろんこれは嘘じゃないですよ。嘘じゃない部分だらけです。

【このエントリにはタグがつけられていません】

投稿者 文月そら : 01:29 | コメント (0) | トラックバック

2011年12月 5日

[アニメ感想書籍]『境界線上のホライゾン』よもやま話2(自重しないVer.)『境界線上のホライゾン』よもやま話2(自重しないVer.)

 なんか意外とホライゾンで検索してこられる方がおられるので、ホライゾン話をもう一度やってみようかと。

 ホライゾンを楽しむコツは、わからんとこはすっとばして自分の好きなところを中心に見ることだ、というお話を前回したと思うんですが、では私が具体的に何を中心にホライゾンをみているかといえば、余こと東と、車椅子のミリアムと、幽霊少女の折りなす擬似家族コントです。
 いかんせん話の本筋と今のところあんまり関係がなく、しかも4巻中現在でも幽霊少女の正体がまるで分かっていない等、不明な点も多いため、アニメでは残念ながら省かれがちです。
 しかし、箱入り、というか世俗と完全に切り離されて育ったせいで全く性的なことについて知識のない東と、「女の子が攻略できるなんて思い上がりよ。世の女の子は、がんばる男の子をみて難易度を下げてあげるのよ」などと嘯きつつ、物凄い勢いで難易度が落下し続ける系女子、ミリアムのラブコメがたまらなく好きなんですわ。
 実は、ミリアムの正体が某超有名人の襲名者だという考察もあったりして、しかもそれが結構説得力あったりするんで今後が不穏な気もしますけど、まあ東がなんとかするでしょう。というかしろ。
 さらに、これは前作もそうだったんですけど、この作品は他にも、ものすげえ沢山カップルが登場するんです。
 しかもそれぞれがそれぞれなりにラブラブすぎてたまらん。男女カップルはもちろん、女性同士だったり、今回は今のところ男性同士ってのはないけど、とにかくあっちゃこっちゃでラブが米っているので、ラブコメ好きとしてはたまりません。
 しかも大体マンツーマンラブなので、ギスギスしたところが全然ない点も個人的に評価を高くしているところです。でもとりあえず点蔵は爆発しろ。

 ここで根本に立ち返って、境界線上のホライゾンという物語がどういう物語かといえば、意思の物語であると言えると思います。
 アニメでやったところですと、自動人形の鹿角さんと本多・忠勝が身を捨てて本懐を遂げるシーン。
 目の見えない鈴がホライゾンの思い出を語り、ホライゾンを助けてと訴えかけるシーン。
 敵側だったはずの正純がトーリに「必ずホライゾンへの道をつけてやる」と宣言するシーン。
 ああいう、強い意志が道理をけっとばすシーンが、いつも力強く描かれています。
 ホライゾン世界は末世という、まあ平たく言うと世界の破滅、消滅へ向かって進んでいる世界です。
 その滅びの運命に、意思ある者達が、それぞれの立場で抗う物語。

 そういうところが、私は好きです。

【このエントリにはタグがつけられていません】

投稿者 文月そら : 01:26 | コメント (0) | トラックバック

2011年11月19日

[アニメ感想書籍]『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』ブームは何故落ち着いてしまったのか『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』ブームは何故落ち着いてしまったのか

 8巻発売直前までの俺妹(俺の妹がこんなに可愛いわけがない)は、まさしく絶頂期だったといえるでしょう。

 割と運次第なアニメ化もそれなりの高評価を得、新規読者が増えた上で、7巻最後の黒猫の告白から今後の展開がどうなるのか、に、大きな注目が集まり、方々で全身全霊を傾けた議論、煽り合い、多数派工作が展開されました。

 そして8巻発売。

 内容自体は理解できる。という話は発売当初の感想にも書きましたが、私自身としても、あるいは周囲のファンの反応を見ていても、あの後、色々落ち着いてしまった感が否めません。
 実際、9巻もちゃんと読んでいますが、感想エントリは書かずじまいでした。

 思えば黒猫の告白、およびその後の交際開始展開には、もの凄い締め切り効果が働いていたと思います。
 これまで微妙なバランスの上で、ある意味十年一日のごとく成り立っていた京介をめぐる人間関係が、確実に一歩前に進み、(黒猫がそのまま彼女になるのか否かはともかく)ついに何らかの結論がだされるはずだという期待、あるいは予感が強く働いたのです。

 そうなると、近い将来、おそらく9巻あたりまでには出されるであろう(と当時思っていた)『結論』をめぐって、ファン心理は加速しました。
 見えてきてしまったゴールが、自分の期待するモノなのかどうか、最高潮に高まった不安と期待は……しかし8巻で、肩すかしをくらうことになりました。

『なんだ結局、当分結論は出ないのか』

 この感想は、それぞれ立場は違えど、多くの読者に共通するものだったのではないでしょうか。

 7巻発売以前の状態に戻っただけとも言えますが、ここがクライマックスかとばかりに盛り上がった以上、元の木阿弥状態にはやはり残念さが漂います。

 まあ、9巻の日向の『高坂くん超かっけー』が何を意味するのかによっては、次巻あたりで大きな動きがある可能性もありますが、散々踊らされた後だけに……あんま期待はできないかなー。

 演出論的な話になりますけど、読者はフィクションに、何らかの刺激(感動とか恐怖とか共感とか成功体験とか絶望とか、あとかわいいとかエロとか)を求めています。
 京介に彼女が出来るというイベントは恐らく本作中最大の刺激を読者にもたらすカードです。
 ただし、これを不用意に使ってしまうと、それ以降、作中で何が起きても物足りないということになってしまいかねません。
 最大級の刺激をすでに受けてしまっているために、読者があらゆることに慣れてしまうのです。
 今後、京介に本当に彼女ができても、すでに一度体験してしまった刺激なので、インパクトはどうしても薄れます。
 この最強のカードを、不完全燃焼な形で使ってしまったことは、俺妹という作品のファンとして、残念だなあとどうしても思ってしまいます。8巻、9巻を読んでから時間が経つにつれ、一層そういう念が強くなりました。

 正直、結論を出さないのなら、あのままずっとラブコメしていてほしかった。

 もちろん今後も読んでいきます。
 私なんぞの浅薄な懸念を吹き飛ばすような展開を期待しています。

 当方に土下座の用意あり。

【このエントリにはタグがつけられていません】

投稿者 文月そら : 16:33 | コメント (0) | トラックバック

2011年11月18日

[アニメ感想書籍]『境界線上のホライゾン』よもやま話『境界線上のホライゾン』よもやま話

 現在絶賛アニメ放映中の境界線上のホライゾン。
 最初アニメ化するって聞いたときは正直耳を疑いました。
 だって(一応この世界の歴史を下敷きにしているとはいえ)完全に異世界の話で、オリジナル設定だらけですから、アニメという媒体には最も向かないタイプの話だと思ったからです。
 まあ単行本の厚さを見てもアニメ化に向かなそうだというのは分かると思いますけど、本当のところを言えばホライゾンシリーズの内容を全部読んですら設定を語ることは出来ず、その前の『終わりのクロニクル』さらに前の『都市シリーズ』まで含めた、というかホライゾンが終わったあとも続いていくロードマップがすでに存在する、壮大過ぎる歴史サーガなんですよ。
 もう絶対に既存ファンだけしかついて行けない内容になるに違いない……と思っていたんですが、実況まとめサイトなんかを見ると、意外と新規の人も残っているみたいですね。
 まあ、川上稔氏の作品群を読むときの鉄則は『わかんなかったら読み飛ばす』なので、アニメで細かいことを気にしないで好きなとこどりをして観る、ということができた人には、氏の作品は会うかも知れません。
 なんせ、既刊全部読んでいても、突然新設定が出てきて、初読時には全く意味が分からないなんてこと、日常茶飯事ですから……。
 アニメはどこまでやるんですかね。1巻最後までかな。

 2巻行ってイギリスに行ってしまうと、薬中詩人ベンジョンソンさんという、非常に物議をかもしそうな人がでてくるので心配です(笑
 ええ、某陸上選手の話じゃないですよ。歴史上実在した、詩人のベンジョンソンです。あの人とは関係ないです。ええ、きっとそうです。

【このエントリにはタグがつけられていません】

投稿者 文月そら : 00:32 | コメント (0) | トラックバック