2010年2月22日
■[感想書籍]『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』(ネタバレあり)
誠に失礼ながら、侮っていた。というのが正直な感想である。
一応このお話の概略は人づてに聞いて知っていた。
曰く、妹がかわいい話である。
曰く、妹はオタクであり、それを隠している。
曰く、有名ニュースサイトの名前が出てきて、発売当初各サイト大騒ぎしていた。
などなど。
それら風評を耳にするにつけ『なんとなく内容は想像つくなあ』『まあ読めば面白いのだろうけど、なんか色々あざとい気もするしなあ』などと思い、結局手を出さずにここまできた。
そんな中、初音ミクの絵と曲から入って、挿絵のかんざきひろ氏のファンになり、コミケで本を買った余勢を駆って、自分の中で再びクローズアップされてきたのが、本作「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」だったのだ。
ということで、買って、実際に読んでみた。
当初の見込みとしては、お約束満載の萌え小説だろうと思っていた。正直、あまり好きなタイプの話じゃないかも、と思っていた。……でも、全然違った。
勿論、キャラ配置や設定をはじめ、いわゆるお約束的な道具立ては結構ふんだんに用意されている。その辺の印象は当初とそんなに違わない。しかし、それを使って描こうとしている部分、フォーカスがあたっている部分が全く違った。
それは、ひと言で言うなら『現代のオタクを巡る諸問題と、そこに生きるオタクの姿』といったものだと思う。
隠れオタクと一般人とのコミュニケーション問題であったり、いわゆる児ポ的な問題であったり、同人活動であったり、才能と嫉妬の問題であったり、オタクであること自体の恥ずかしさであったり。切り口は各巻様々だが、我々にとって結構重いテーマが、明るく、しかし真摯に描かれている。
そこに描かれる登場人物の姿も魅力的だ。彼らはオタク非オタクを問わず、思想的な対立はあっても、皆根本的には誠実で優しい。こだわりや信条、コンプレックスや偏見で時に強く対立することはあっても、皆最終的には相手の話を聞く耳を持っている。
主人公は実は非オタなのだが、彼の持つ眼差しの優しさも素晴らしいと思う。彼にはどんなに素直じゃない人間が相手でも、自然にその良さを見抜ける目がある。それなのになんで妹のことだけ散々延々と誤解し続けてたんだとも思うが、まあ身近すぎたんだろうし、その辺は語られないエピソードがありそうだ。特にアルバムのあたりに。
まあ正直なところ、現実はそんなに甘くねえですよとも思わんこともない。世の中そんないい人ばっかりではないし。……でも、それはそれとして、主人公を囲む、オタクや非オタクたちの優しい世界が、私は嫌いじゃない。
とりあえず、気配り超人こと沙織の正体と、完全な一人勝ちかと思われたヒロインレースに、最新刊で突然大外から物凄い足でまくってきた黒猫の今後が気になる作品です。
あ、一つ書き忘れたけど、タイトルから連想されるような「妹の正ヒロイン昇格」だけは絶対無い作品です。どう転がっても互いの甘えから抜け出せずに不満を溜め込んだり、当り散らしたり、すれ違ったりしてしまう。家族としての兄妹の距離感の描き方も、この作品の見事な点だと思います。
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投稿者 文月そら : 02:20 | コメント (2) | トラックバック
2009年11月 7日
■[書籍]ラノベ話
最近追っている連載が完結するなどして段々減ってきたので、いくつか増やしてみました。1つは鋼殻のレギオス。たまたま観たアニメでフェリがとっても無表情でかわいかったからです。もう1つが影執事マルクシリーズ。やまたさんが薦めていたからです。
鋼殻のレギオスについては、特異な世界観が面白いですね。
脚がいっぱいある都市が荒野をガションガション歩く姿は想像するだけで妙に楽しい。
最初は異世界に生きるモテ天才を描いていく話かと思っていたのですが、彼を含めた武芸者と呼ばれる戦闘員全員が『勁脈』という人間にはない器官を持つ『人から生じながらも人でない』存在であるとされており、さりげない断絶が示唆されていたり、またこの世界自体が創られたものである可能性も示されていて異世界ものですらない可能性があり、そう話は単純ではないようです。(現在10巻を読了した時点の認識)
とりあえず言いたいことはレイフォンモテすぎでありフェリにしないならもげろ。
影執事はタイトルで物凄く損をしていると思います。正直お薦めの言葉がなければ手を出さなかったでしょうね。
ところで、自信をもって襲撃→返り討ち完敗→絶対の忠誠の流れにどうも既視感があったんですが、これ東方の咲夜の縁起のパターンに近いですね。そういえば。
よくある俺様最強主様最高執事ものではなくて、影執事くん結構負けるしかなり不幸です。彼の強さの理由、彼が鈍感な理由もきちんと用意されており、非常に丁寧な語り口です。たくさんキャラが出てきて群像劇的でもあり、しかも主人公を中心とした放射状の人間関係ではなく、脇キャラクタ相互の相関関係もかなり複雑なものになっていて面白いです。
更に、15X24も話題になっていたので買ってみました。『もっと評価されるべき』的な取り上げられ方をよくされていたので、なんとなく新人さんかしらと思っていたのですが……著者新城カズマ……? ――って蓬莱学園の人じゃんか!w そりゃ凝った話に決まってるわ。これはこれから読みます。
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投稿者 文月そら : 01:08 | コメント (0) | トラックバック
2009年3月21日
■[書籍]もうとらドラ最終巻出ちゃったけど、再読は継続する試み その5
さて。
まだ十巻読んでません。とらドラ関連のサイトはどこにもいけません。
おれ、この感想書き終えたら、十巻読むんだ……。
では、はじめたいと思います。例によってネタバレ全開ですので、ご注意くださいね。
今回は3巻読了まで。この巻は正直難しい。
前巻ラストシーン、竜児と亜美の現場目撃からの大河の怒り継続中なわけだが、大河のこの激烈な反応っぷりは一体何だろう。怒りも言動も理不尽すぎて初読時はついていけなかった。その後の亜美との竜児と過ごす夏休みを賭けての水泳対決まで含め、この巻のテーマは、大河と竜児の互いの気持ちということなんだろう。
多分、大河のあの執拗なまでの怒りは、自分と竜児との関係を、簡単な分かりやすい言葉で決め付けられるのが嫌だったのだろうと思う。確かに一緒に生活しているし、一緒にご飯を食べている。弁当も作ってもらっているし、家事全般もやってもらっている。それが常の友達の、特に男友達のあり方とはかけ離れているのはわかる。でも、そんな関係になんと名前をつければいいのか。
好意を持っている、好きだと型にはめてしまうのは簡単だ。でも大河が竜児に対して持っている感情は、北村に対して抱いていたそれとは違いすぎる。ふわふわと、わきたつものがない。憧憬も不安も決定的に欠けている。
代わりにあるのは、安心だ。どんなにみっともない顔を見せても、どんなにドジな姿を見せてもいい。奴は見捨てない。かえって喜んで世話をやいてくる。だから気負わず、自然体でいられる。大河にとっての竜児の前というのはそういう場所なんだと思う。
では、そういう関係は何なのか。家族といってしまうには、大河にとって家族という存在が遠すぎる。じゃあなんだ。なんでもない。わからない。わからないけれど、とにかく居心地のいい場所。そんなあいまいなごまかし。
一方で竜児の側もごまかしている。大河という存在は何なのか。それは本当に家族愛なのか。竜児はあたしのもんだと言われて嬉しかったのは何故か。否定されて腹が立ったのは何故なのか。答えから目をそむけたまま、思う存分世話を焼かせてもらえる居心地のよさにやっぱり甘えている。
二人とも、特に大河は答えを出せない。出してしまえば確実に何かが変わる。少なくとも、現在二人の関係を成立させている大前提『互いの恋を応援する』が崩壊する。そうしたら大河はまた独りになってしまうかもしれない。竜児はまた、家以外の居場所を失ってしまうかもしれない。
不安も、胸の高鳴りもない。ただ、一緒にいて安心する。空気のように必要とする。かけがえがないと執着する。そんな存在。
それは確かに恋ではないだろう。
でも、それよりむしろ一歩進んで、愛情ではあるんじゃないかい? 高校生からすると想像から遠すぎるかもしれないけれど、例えば夫婦のような。
そう大河に言ったら……まあ、確実に殴られると思う。やっぱり。
ところでやっちゃんが、大河は本当に嫌いな人とは同じ皿からご飯を食べないといっていたけど、大河はこのときすでに亜美と一緒にご飯食べられると思う。2度溺れた大河を2度とも本気で心配する亜美の姿を見ていて、なんとなくそう思った。
そして、ラストで亜美の別荘の計画に大河が割り込んできたとき、確信した。
多分、亜美が本当に大河の参加を受け入れた決め手は、大河の『いいでしょ? 私にも見せて。私も一緒に行きたいもん』の台詞だったと思うから。
大河って、自分に向けられる感情に敏感だから、亜美のこの好意は、伝わっていると思うのだ。
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投稿者 文月そら : 01:20 | コメント (0) | トラックバック
2009年3月 5日
■[書籍]もうとらドラ最終巻出ちゃったけど、再読は継続する試み その4
……もう最終巻出ちゃったので、タイトルも変わっちゃいました。再読はこれからも続けたいと思います。
問題はすでに手元にある10巻をどうするか。
……まあ、頃合を見て読みます。
では、はじめたいと思います。例によってネタバレ全開ですので、ご注意くださいね。
さあ、今回は二巻読了まで。
初読時に亜美が登場した時は戦慄したものだ。お世辞にも教室内政治に長けているとはいえない竜児・大河が、恐らく相当えげつない芸能の世界で天使の仮面を磨いてきた亜美に、どれほど酷い目にあわされることか、と。
読み進めながら、妄想は加速する。亜美は大河を追い落とそうと思えば、早速出来た取り巻きを利用して、いくらでも汚い手が使える。例えば大河の乱暴についての悪い噂を流して孤立させたり(その信憑性は高いなんてもんじゃなかっただろう)、あるいは大河の弱点(家族の問題とか、北村への好意とか)を調査して責め上げたり。それこそもっと陰湿に、教師たちの大河の印象を悪くさせる工作を仕掛けたりもできる。……などと、私は脳内に次々と自動展開される今後の陰惨な展開に、勝手に恐怖しながら読んでいた。
でも亜美は、性悪ではあっても、卑怯者ではなかった。そういうことは一切せず、というか念頭にすらなく、あくまで亜美個人として大河につっかかってきた。むしろ下腹晒し上げ攻撃といい、物まねメドレー百連発といい、大河実乃梨側のほうが世っぽど人でなしだったくらいだ(笑
実のところ亜美は八方破れだ。
竜児が自分の本性に最初から気付いていることもわからなかったし、そもそも幼馴染の友達に本性を晒して無駄に敵を作るなんてうかつすぎる。つまり、本来の性悪亜美は、実は結構計算下手な、ストレートな性格なんだろう。
そんな性悪亜美は、モデルの仕事を通じて、次第に居場所を失っていった。自分がちょっと可愛い様子を見せれば、みんなが熱狂する。みんなが亜美のことを好きだという。でもそう言われれば言われるほど、本来の性悪亜美の部分は影に押し込められていかざるを得ない。
ストーカー男は、そんなモデルとしての可愛い亜美ちゃんが意識する、ファンの目の象徴だったのだろう。どこにいても、どんな時も、じっとりと自分を刺し貫く視線。いつ正体を写真に撮られてばらまかれるか、心休まる暇もなかったのだと思う。亜美は、性悪な自分がバレれば、仕事を、今の自分を失ってしまうと思っていたから。
そんな視線から、性悪亜美はいつも逃げ回っていた。逃げて逃げて、可愛い亜美ちゃん像で塗り固めたお城の中に逃げ込んで、震えていた。
でも亜美が八方破れなら大河は三十二方破れくらいである。誰の目も気にしない(北村以外)。気に入らなければ吠える、噛み付く、引き裂く。亜美が苦労を重ね、計算して取り繕っている体面なんて、ハナから全く気にしていない。亜美の態度にむかつきまくった大河は、そんな可愛い亜美ちゃんのお城を、あっさりとぶちこわしてしまった。
でも、お城は中に居る者を守る鎧であるとともに、囚われの性悪チワワを閉じ込める檻でもあった。ぶち壊された檻から出ることができたから、ストーカーに噛み付くこともできたのだ。恐怖の涙に濡れながらも。
檻から出て、初めて自分の現実と戦った亜美の目の前に、竜児がいた。亜美にとって最も与し易い相手のはずの、同年代の男子でありながら、自分の思い通りにならない存在。多分初めて、亜美が対等と思えた同年代の男子。……これは、一種の刷り込みだったのかもしれない。殻を破って、目を開いた亜美の前に、彼がいたのだ。
でも、この時すでに亜美の入り込む余地は……。うう。
最終巻、亜美の決着はどういう形でついてるんでしょうね。楽しみなような、怖いような。
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投稿者 文月そら : 21:48 | コメント (0) | トラックバック
2009年3月 4日
■[書籍]もうすぐとらドラ完結するらしいからそれまでに再読する試み その3
時間があいてしまいましたが、とらドラ再読感想第三回目です。例によってネタバレ満載ですのでご注意のほどを。
あ、最初にお詫びと訂正を。
前回のインコちゃんの件ですが、竜児が卵からかえしたという描写があるというご指摘をいただきました。……いやはやお恥ずかしい。
さて、ようやく1巻の最後まで。
最初に、クッキー事件の最後で出てきた、やっちゃんの『薄ーい超能力』の件。
読み返すまで全く忘れていたんだけど、これは一体何なんだろう。『やっちゃんから受け継いだ超能力のおかげで大河を助けることができた』という形で、特にその後も否定されていない。ここだけなんかファンタジー文脈で違和感がある。
何らかの比喩として最終巻で回収されるのかな?
でもって、やっぱり1巻といえば、大河の告白。
――竜児、わかってない。
どうしてあれだけ不器用な大河が、苦労しながらも、真っ直ぐに告白することができたのか。
今後、なんだかんだあるけど、このときを除いて、大河は告白に成功していない。なんでこの時だけ告白できたのか。しかも、たったひとりで。
電柱をやっつけた後、大河は竜児を解放した。あの時、大河は竜児がみたように、自分を囲む敵と戦ってもいただろうけど、もう一つ、大きなものを殺したんだと思う。
それは、自分の中の竜児という存在だ。
大河にとって竜児は理解不能な存在だったはずだ。自分が何をやらかそうとも、どこかしら弱っている部分を見つけてきて、ただひたすらに世話を焼いてくる。しかも、明らかに邪念がない。利己的な人間ばかりを見てきた大河には本当に理解不能だったろう。
でも、大河にはそんな父親のような、兄のような、あるいは弟のような、いや、それらどれでもなく、竜児のような存在が必要だった。
つきはなしてもなじっても、そばに居てくれる竜児が必要だった。
威嚇しなくても怖くない、竜児が必要だった。
きっとそれは恋なんかよりも切実だった。
そんな自分の中の竜児を切り捨てた上で、決めた覚悟だから、大河は失敗するわけにはいかなかった。身を切るような喪失感が、恋の熱でゆだりそうになる大河の頭を覚ましていた。そう思う。
だからあそこで、あふれ出してしまったのだ。よりにもよって北村の目の前で。
喪った竜児が自分にとってどんな存在だったのかが、口から噴き出してしまったんだと思う。
竜児、わかってない。
そして、みのりんは多分、わかってた。
ここから、すでにボタンのかけ違いがはじまっていたんだなあ……。
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投稿者 文月そら : 04:06 | コメント (0) | トラックバック
2009年2月22日
■[書籍]もうすぐとらドラ完結するらしいからそれまでに再読する試み その2
はい、では第二回目いきます。ネタバレしまくりなので、どうかご注意を。
今日はチャーハン食い終わってから、翌朝登校時実乃梨と出会って竜児が置いていかれるまで。
まずは、チャーハンのシーン。
ひととおり食い終わって人心地ついてから、大河は、さぞかし驚いたんだろうなあと思う。
多分大河は、これまで他人から無償で何かをしてもらうことは、ほとんどなかったんじゃなかろうか。
無論生活費は提供されているし、住環境だって、もしかするとあの山のような衣類だって、あの父親から提供されたものかもしれない。
でも、そういうのと、竜児がしてくれたことは違う。あれで大河は、それなりに常識をわきまえているので、深夜木刀持って襲撃をかけるような自分が、(討ち漏らせば(笑)
)通報され、今後も竜児に敵視されるであろうことは覚悟して臨んでいるはずである。
それだけ無茶苦茶やらかした自分を、竜児はちゃんと「見て」、彼なりに大河にとって必要だと思うものを提供してくれた。チャーハンもそうだし、恥ずかしい恋愛話もそうだ。
後のクリスマスエピソードにおいてはっきりするが、大河はいつだって誰かに見ていてほしかった。竜児のくれたものは、父親からのそれのような金額と量で計ることのできるものじゃない。彼はあの夜、大河を見ていたし、大河もその眼差しを感じたはずだ。しかも、打算なく。……その計算のなさは、竜児お前頭悪いんじゃないかと思うほどである(笑)
木刀で夜襲してくる襲撃犯を手料理で歓待して帰すなぞ、全くもってお人よしにもほどがある。そもそもそんな対処で、普通襲撃犯は納得しないし帰らない。そんな底抜けのお人よしが竜児なのだ。
だから大河は、竜児の言うことを信じた。
ラブレターには中身が入っていなかったこと。
封が開いてしまったのは偶然だったということ。
そんなザマを北村に見られなくてよかったということ。
竜児がこの事件を決して北村に話したりはしないこと。
そして最後に――竜児が顔に似合わぬ、いい奴だということを。
だから――これは多分、この時点では意識的にではないけど――身近に置こうとした。敵ばかりの世界で、背中を見せられるかもしれない存在を見つけたから。
そのためのポジションが『犬』ってあたりが、大河の哀しい不器用さを象徴しているとも思うけど。
そしてこの事件は、高須家にひとつの痕跡を残した。
襖に咲いた薄桃色の便箋の桜の花。
それはいつまでも竜児と大河が本当の意味で出会ったこの春の夜を語り続けるはずで、この物語の終わりに、これがどんな意味を持つのか。非常に気になる。
特にやっちゃんにとって。
そして、大河の部屋を初めて訪れるシーン。
でかい部屋のでかいベッドに、まるで放置された人形のように転がる大河。
インコちゃんという存在が今まで非常に謎だったんだけど、このシーンでそんな大河を見つめる竜児の視線をなぞっていると、なんとなくインコちゃんが高須家の一員になった様子が見えてきた気がする。
要するにきっと、インコちゃんはペットショップ中でぶっちぎり一番ぶさいくな生き物だったんだろう。当然、店員からの愛情も受けられず、適当に世話をされ、新聞紙やらエサやらフンやらにまみれて、鳥カゴの床に、ゴミのように転がっていたんじゃなかろうか。
多分、竜児はそういうのは放っておけないのだ。
これは、綺麗ごとの話ではない。前回もお話したように、竜児とやっちゃんは、互いに助け合ってこれまで生きてきた。竜児にとって、生活力のないやっちゃんを卓越した家事能力で助けるというのは、生きがい、というより、竜児という人間の価値そのものだと信じているんじゃないかと思う。
本当に小さな子どもの頃、竜児は働くことができなかった。簡単な家事だってできなかった。無論お金を稼ぐこともできないし、疲れ果てて帰ってくる母のために、できることは何もなかった。そんな口惜しさや、常に先行きの薄暗い二人の生活と、戦うための力として、竜児は家事能力を身に着けていったんだと思う。
竜児にとって誰かを世話し、役に立つということは、生きることそのものだったのだ。
だから竜児は、本当に打算なく、ほとんど反射的に、大河に手をさしのべることができた。
そんな『白い』手が、大河には必要だったんだと思う。
……こんな調子でやってたら、絶対に最終巻発売に間に合わないことに気付いた……。
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投稿者 文月そら : 04:15 | コメント (0) | トラックバック
2009年2月21日
■[書籍]もうすぐとらドラ完結するらしいからそれまでに再読する試み その1
相変わらず思いつきで運営されているこのサイト、最近のテーマはとらドラ!です。
とはいっても、アニメ版の話ではなく、小説版の話。当然ネタバレ全開でお贈りする予定なので、今後、読む予定がおありの方はご退避を。
……しかし、じっくり読んでいると、全然進まないねえ。
とりあえず、1巻の大河チャーハン祭りまで。
初読の時は、大河、実乃梨、北村、竜児の関係ばかりに気を取られていたけど、9巻のあの展開を知った上で読むと、冒頭からえらい示唆的な話だなあと思う。
すなわち、この日は、竜児、高校二年生の始業式の朝。
母泰子ことやっちゃんが、迎えることができなかった朝。
……冒頭から、これは自立の話なんだなあと、なんだかしみじみしてしまいましたとさ。
多分、高須家を見つめる周囲の視線は相当厳しかっただろう。水商売の母子家庭。でもって息子はヤクザなご面相。どんな悪い噂も立て放題であり、ムショ暮らしとも言われる父親の存在により裏づけされた、それら噂の悪質さは、恐らく教室におけるそれの比ではないはずだ。
やっちゃんはあんな感じのくにゃくにゃダメな人だが、それでも竜児を、世間の冷たい視線と、銭金の問題から、社会的な意味と経済的な意味で守りとおしてここまで育ててきた。竜児をあんないいヤツに育て上げているのだ。家の外では立派な親だったのである。
反面、家庭内については、竜児が逆にやっちゃんを支えてきたはずだ。ずっと我々がみてきたように。
要するに高須家は、外から見たら母子家庭。中から見たら父子家庭だったんだと思う。
それは見事なもたれあい。竜児はやっちゃんにとって、失踪した夫の役割すら担っていたんじゃないかとも思う。
それが、この朝を始まりとしてゆっくりと崩壊していく。
恐らく、実乃梨への恋で、それが兆し、大河との出会いで、それが始まったんじゃなかろうか。要するに竜児は、『外』に、愛情を注ぐ対象を得た。雛鳥は、居場所を得、大空を知ったのだ。
などと、がつがつとチャーハンを食い続ける大河の様子を読みながら、思った次第。
……これは本当にとらドラ!の感想なんだろうか……(笑
ま、まあ今日のところはここまで、ということで。
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2008年5月 7日
■[書籍]秋山瑞人、新刊!?
ちょっとちょっとなにこれ!?!!
私設あまぞんレーダーにひっかかってきたんですけどね。
龍盤七朝DRAGONBUSTER 1 (1) (電撃文庫 あ 8-13) 秋山 瑞人
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……は? あの、あれ?
ミナミノミナミノは……?(笑
まあ、なんにしろ秋山さんの新作が読めるなら非常に喜ばしいです。
あと、驚きといえばこういうのも出るそうで。
A君(17)の戦争-I,THE TYCOON?-1 (角川コミックス ドラゴンJr. 124-1) 豪屋 大介 松本 規之
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え、A君!?
漫画化はいいんですが、ノベルの続き、出るんですか……?
出るんなら凄く嬉しいんですが……。
でもってもちろんレギュラーでチェックしているこれも出るわけですよ。
ガンパレード・マーチ九州奪還 2 (2) (電撃文庫 J 17-20) 榊 涼介
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ルイズの続きも出るようだし、今月はサプライズ込みで盛りだくさんだわ……。
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