2011年4月27日
■[感想書籍]神様のメモ帳1〜6巻
三巻まで読んでみて、これは面白いと思い、最新六巻まで一気に読了しました。
乱暴に言えば、ゴシックと新宿鮫が悪魔合体して探偵は12歳美少女ですという感じのお話です。
毎回様々な、割としゃれにならない揉め事が起こります。高頻度で暴力沙汰です。
でも根底に流れるのは、誰かを待っている人と、待たせている人のすれ違い、あるいは再会の物語。
真実は往々にして救いではない、ということが繰り返し語られます。
活躍するのは概ね男であり、物語上輝くのもほとんど男という、男性向けラノベとは思えないチャレンジングな仕様ですが、お勧めできる内容だと思います。
以下、ネタばれありです。
ただ正直、最新刊まで読んでみてのテンションは、三巻までと比べて少し下がり気味です。
少佐もヒロさんも四代目もテツ先輩も、非常にいいキャラクタで、巻を追うごとに好きになってゆきます。
……つうかこの作品は男が魅力的すぎる。
アニメ化にあたり、物凄い勢いでホモ同人が乱立しそうな予感すらします。
主人公の鳴海も、女性関係での他人事ながら殴りたいほど腹が立つ鈍感ぶり以外は、魅力的なキャラクタです。
それなのに、なんでテンションが下がり気味なのか。
それは、四巻以降、彩夏の扱いが酷すぎるからです。
鳴海にとって彩夏は、はじまりの唯一人であり、世界の扉そのものであったはずです。
彩夏と知り合い、園芸部に、ラーメン屋に誘われなければ、何も始まらなかった。
ただ一人でグチグチくすぶっている、一巻冒頭時点のうっとおしい鳴海のままだったはずです。
彩夏は一見社交的ですし、周囲のあらゆる人とうまくやっているように見えてしまいます。ほっといても問題がないように思われがちでしょう。
でも実のところ彼女のそういう姿は、周囲から期待された役割を演じているだけで、内面的には離人症に近い状態なんじゃないかと思われるほどです。
記憶を失ってからは特にそうだと思います。前より一層、自分が本当に何を考え、何をしたいのか、わからなくなっているんじゃないかと。
そして、物語上の立ち位置は、現在、ほぼモブになっています。
園芸委員会での接点もなくなり、また事件捜査にも関われない以上、自然なことではありますが……。
積極的な分、メオの方が目立つくらいです。
で、少なくとも鳴海は、彩夏がそういう性格だということを知っているはずです。
見た目よりもずっと危うい。むしろ登場キャラクタの誰より爆弾をかかえている。
何かの拍子に記憶を取り戻しでもしたら、発作的に何をするかもわからない。それも知っているはずです。
それなのに、なぜあんなに放っておけるのか。
一度完全に失って、あんなに苦しんだくせに。
ぞっとしたのが、最近、鳴海とアリスが二人きりで事務所を開き、そこで生活することを応援するような発言を、彩夏がし始めたことです。
それまでは、無防備なアリスを諌める(=二人の間に割って入る)立場だったのに。
単純に『アリスと鳴海の友人としての彩夏』という役割を演じたんだと思うのですが……これ、かなり高水準で自分を見失ってしまっているんじゃないか。しかも、自分から二人に話を振っているし。
……何か、彼女の中で、マズいことが起こっている気がして仕方がありません。
そういうことを考え出すと怖すぎて、アリスと鳴海のラブコメシーンも全く楽しめません。二人とも彩夏ほっといて能天気になにやってんだと思ってしまいます。
このへんは多分私がアリスに全く感情移入できないのも悪いんだろうとも思うんですが……。俺妹の桐乃もそうですけど、どうも『素直になれなくて不器用なあまり横暴になる』キャラクタが苦手なんですよね……。視界から外したくなってしまう。
まあ、小学生のアリスにそんな配慮を求めるのは酷な話ですけど。
作者さんが単に何にも考えていなくて、成り行き上彩夏が空気ヒロインになったというだけなら(別ベクトルで腹は立つものの)まだいいんですが、わざわざ三巻で結局彩夏の記憶を戻さなかったことを考えると……何か仕込んでいるんだろうなあ。
考えてみると彩夏の兄、かなりいろんな主要人物にかかわりの深いキャラクタのはずなのに、あれ以降全く出てこないし。
ここまでの丁寧な話作りから考えても、何かありそうです。
ということで、怖がりながら続刊を待ちたいと思います。
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投稿者 文月そら : 02:06 | コメント (0) | トラックバック
2011年3月 3日
■[感想書籍漫画]物凄く天野美汐方面に偏った綾辻行人「Another」漫画版の感想
※致命的ではないと思いますが当方小説版を読了しており、多少ネタバレあります。ご注意を。
最初に謝罪しておきますが、私は綾辻行人さんの作品に苦手意識がありました。読んだのはいわゆる館シリーズだったのですが、面白いけど、どこか合わないなあと思っていたのです。
この『Another』も、実は以前薦められたことがあったのですが、そんなわけで敬遠していました。
ところが、これの漫画版を読む機会がありまして、衝撃を受けました。
さて。私は大体、どんな作品に触れるときでも、無意識のうちに美汐ランキングを作ってしまい、その上位ランカーを無条件でひいきする傾向があるのですが……この『Another』のヒロイン、特に漫画版の見崎鳴の天野美汐っぷりといったら物凄いレベルでした。ちょっと類例が思いつかないくらいです。
例えば……。
・ボブで髪の毛くるくる
・クラスで孤立
・事件の開始を告げる役割を担っている
・真面目で物静か
・それなのに不思議なことをいい、不思議な行動をとる
・つまり語り部であり、存在そのものが物語の説得力になっている
・過去にとても悲しい別れを経験している
しかも作画の清原紘さん、凄みすら感じるほど、美しく、かつ、不吉な画面作りをされていて、雰囲気も素晴らしいのです。
ひと言で感想を言うなら
「うおお! 鳴ちゃん不吉可愛いいい!!」
……といったところでしょうか。
そんなこんなで漫画版の一巻を読んでから居ても立ってもいられず、ハードカバーの原作を借りてきて全力で読みきりました。
そしたら更に素晴らしい事実に直面しました。
この話、ホラーなのにすげえヒロインと主人公がいちゃつくんですよ!
まあ、二人とも真面目な性格なので、直接的ないちゃつき方はしないんですけど、とある事情もあって、ずっと二人きりで事態に対応していくんですよね。もうなんつうか、すばらしい。
まともな感想も言っておきますと、読みながらホラーとミステリの相似について考えさせられました。すなわちどちらも『明かされない真実』があって、その解明に取り組むと共に事態の打開を図るわけですから。
さすが実績あるミステリ作家らしく、すごく丁寧に伏線回収をするホラーで、特に終盤、話のピースがぴたりぴたりとはまっていく様はとても気持ちよく、面白かったです。綾辻さんの作品への偏見を綺麗さっぱり吹き飛ばしてくれました。
そもそも館シリーズを読んだのは遥か昔、学生時代の話ですから、今読むと印象が違うかもしれません。今度読み直してみようと思います。
漫画版のほうは今月2巻が出たのですが、その帯でアニメ化、実写映画化が発表されました。物凄く楽しみです。
そしておそらく漫画では3巻からいちゃつきが始まるので、そっちは更に楽しみです!!
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投稿者 文月そら : 20:53 | コメント (0) | トラックバック
2011年2月 1日
■[ゲーム感想]うみねこのなく頃にとは何だったのか〜Ep8プレイ後の個人的総括〜
※本エントリはネタバレのみで構成されています。ご注意ください。
『真相なきミステリにして犯人のいるファンタジ』という感じでしたね。
随分と思い切った幕を引いたなあというのが一番大きな感想です。
ミステリの定義をどこに置くのかという話だと思うのですが、フーダニット(犯人は誰だ)という意味では、一応前のエピソードで黒幕が語られたわけですが、結局個々の事件の実行犯は明言されませんでした。ハウダニット(どうやって)ホワイダニット(動機)についても、やはり大枠が語られたのみで、詳細はほのめかされたに留まりました。
つまり真相という意味では、エピソード7で語られた内容にとどまり、エピソード8というのは、幕引きだけに特化した物語であった、と認識しています。これをミステリと呼ぶのか、ファンタジと呼ぶのかは、本当に読者次第なんだろうなと。個人的にはどちらとも呼べません。うみねこはうみねこだったと思います(笑)
ひぐらしの解答編でもみられた演出なのですが、竜騎士さんは我々観客を舞台にあげるのが好きだなあと、改めて思いました(『惨劇を哂え』などのCD販売時の煽り文句や、罪滅し編の『惨劇を期待していた地獄の観劇者ども』『悪魔どもが喜ぶ脚本』などの台詞)。
それにしても今回は直接的でしたね。『真相究明』が『悪趣味な醜聞暴露』に置き換わって、プレイヤーたる我々の好奇心は、まるで芸能リポーターさながらの醜悪な悪魔となって虚構の六軒島を食い尽くしてしまいました。叩きつけられた皮肉に思わす苦笑してしまいましたけど、第三者であることを許さず、否応なく舞台に巻き込んでいこうとする演出は面白かったです。
私はどちらかというとまともに推理していたほうではなくて、かといってファンタジをまるごと受け入れていたわけでもなく、人間ドラマとしての物語に興味をもって読んでいたので、このエピソード8にはトリックよりも『実際に起こった出来事』と『それをめぐる心情』に期待していました。だからそれが語られなかったのは残念です。
特に紗音であり、嘉音であり、あるいは理御であり、クレル=ヤス=ベアトリーチェであった人物が、本当に愛した人は誰だったのかがすげえ気になっていたので、これがわからなかったのは本当に残念です。
だってこの人、下手すると人格の数だけ恋してやがるので(笑)
どうか譲治のアニキが泣く羽目になっていないことを祈りたい。
(というかこれこそ芸能的な出歯亀興味なのかも……(笑))
それでもざっくり言って、以下のことは正しかったとみていいようです。
・ループ世界ではない
・幻想描写は全て創作
・絵羽生還、縁寿をひきとり、真相を隠したまま死去
・戦人生還
でもって、絵羽生還のエピソード3は、絵羽が匂わせ、縁寿が想像していた真相だったんじゃないですかね。戦人が悪のエヴァと最後まで勇敢に戦い、敗れた。しかし戦人が殺される描写だけはなかった、というあたりからも。
これは単なる想像ですけど、真相を最後まで語らず、口ではどう言っても縁寿に全財産を相続させた絵羽は、多分犯人ではないですね。露悪的に振舞い続け、身を挺して真相を守ったようにも見える絵羽のふるまいから言うと、案外エピソード8の推理ミニゲームの通り、縁寿の肉親、留弗夫一家主犯説が本当なのかもしれません。……ただ、その場合最愛の家族を殺された絵羽が縁寿をひきとって守るかというと疑問なんですが。
あと気になるのは、戦人が脱出の際、ベアトリーチェを伴っていたという描写ですね。
これが本当だとするなら、事件の過程でベアトリーチェの正体を戦人は知り、彼女もベアトリーチェとしての自分を選択して脱出したいうことになり、すると譲治アニキが泣いてしまうんですが……。
一応これでうみねこのなく頃にという物語は幕引きとなったわけですが、こういうメタの上にメタを重ねて、さらにその上から真相を想像させようとする物語が、ここまで沢山の読者を伴って完結したのはすごいことだなあと思います。だって普通こんな複雑なギミックの物語はこんなに読まれませんもの。読むの大変で(笑)
大ヒットを飛ばした作家は、自分の書きたいものを書いて、それを沢山の人に読んでもらえる。それはとてもうらやましいことだなあと、個人的に思いました。
さて、次の夏コミでひぐらしみたいに『礼』は出るのかしら。一応出るような話はあったけれども。出るならまた買おうと思います。
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投稿者 文月そら : 00:57 | コメント (0) | トラックバック
2010年12月19日
■[感想漫画]「docca」
先日ようやく冬コミの原稿あげました。なんと「真剣で私に恋しなさい」本にゲストしたのです。
詳細は近日中にお知らせしますが、幼少時代本になるようですよ。
さて、そんなこんなで手が空いたので、新規漫画に手を出してみました。それがこの「docca」です。
どっか騒動で大揺れの虹ヶ丘町。そこに一人の少女が転校してきたことで、何かが起きたり…起きなかったり!? 軽妙洒脱!超待望第1巻!
詳しい内容とか絵とかはアキバブログさんでも紹介されているのでご参考まで。
異世界とつながった平凡な町でのシュールな日常の話なんですが、これが存外に面白かったです。
前半はネタフリみたいな感じで、安定した絵柄を背景に、この町のムチャクチャさが割と淡々と描写されていきます。
そして後半。というか最後。そうしたこれまでのネタが縦横に連関した物凄くシュールな展開を見せて、大笑いしてしまいました。
今巻の基本モチーフは『王子』ですけど、高貴さとか、ステータスの高さとか、そういう王子という言葉に付随する先入観を根底から覆してくれました。
今後も楽しみに待とうと思います。
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投稿者 文月そら : 18:46 | コメント (0) | トラックバック
2010年11月10日
■[感想書籍]「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」7巻感想その2
昨日のエントリ(リンク先ネタバレ)について、えむけーつーさんから言及をいただきました。これはそのお返事をかねてのエントリです。
当然ネタバレしかありませんので、原作未読の方は回避推奨です。
えむけーつーさんにいただいた言及はこちら。
……なるほど、桐乃と京介に血縁がなく、そのことを桐乃しか知らないと仮定すれば、現状の桐乃と京介の温度差についても綺麗に説明がつきますね……。
非血縁説については、何度か目にはしていたものの、ずっとスルーしてきました。おそらくひとえに黒猫に不利な話であるせいです……。でも、これは無視できなくなっちまいましたね。
何かのタイミングで(そういえば桐乃はプロモデルであり、あの年で仕事をしていますから、契約の時に戸籍を取り寄せた可能性があります)、真実を知った桐乃。大好きだったお兄ちゃんと、実は血の繋がりがなかった。距離のとり方がわからず、挙動不審になる桐乃。その妙に色気づいたような対応に、京介は兄として気持ち悪さを感じて、何かの暴言をはく。これが今巻の
「あのときは気持ち悪いみたいな顔したくせに! なんでいまさら! いまさら! そんなこと言うのよ!」
という台詞につながっていると考えられます。
傷付いた桐乃は、京介を露骨に拒絶するようになる。京介はわけもわからないまま、これまで仲の悪い兄妹の関係に甘んじてきた……。ううん。すげえ綺麗にはまるなあ。
「大好きだったお兄ちゃん」の部分がひっかかる方もおられるかも知れませんが、大体、お互いに大嫌いってことは、お互いに強い関心を持っているということの裏返しでもあります。何かの事件が起こる前は、物凄く仲が良かったんじゃないかとも考えられるわけです。実際、関係が修復されてみると、京介の主観はともかく、第三者からみたらベタベタ湿度の高い兄妹関係になっているわけですから、そういう可能性は高いといえるでしょう。
また、京介に桐乃が生まれたころの記憶があることが、この非血縁説の障害となっていますが、これもこう考えればクリアできます。すなわち、『妹が実子で、兄のほうが養子、あるいは連れ子』であればよいのです。
うひゃあ。なんだこの嵌まり様。もう非血縁としか考えられなくなってきました。
さて、桐乃と京介に血の繋がりがないとすると、俄然桐乃エンドのハードルが低くなってくるわけですが、黒猫派たる私の反論としては、以下の二点があります。
まず一つ目は、京介自身のモラルの問題です。たとえ事実として桐乃と血縁がなかったとしても、今さら京介は桐乃を女としてみられないんじゃないか、ということです。京介はこれまで、心の底から桐乃を実の妹だと信じてきたわけで、その強固な意識は変えようがないんじゃないかと思います。事実はどうあれ、京介にとって、桐乃は大事な妹であり、それはもはや動かせないと思うのです。
もう一つは、昨日のエントリでも少しお話しましたが、最後のこの描写です。
この告白から数日後――
俺と黒猫は、恋人になった。
この『数日後』がなかったら、もっと不安になってたんですよ。確かに、物語の原則として、先行提示した情報は、覆すのが定石ですから。
でも、京介はこの場では返事をしていない。これはつまり、この数日間に、まだ開示されていない物語があるということです。その帰結として、京介は黒猫と恋人になることを決断した。それだけは、確約されているのです。
……まあ、それでもその後、最終的にどうなったかはわからないわけですけど。
ということで、黒猫派としても結構ゆらいでおります。そういう意味で今回MK2さんの提示してくれた図式の綺麗さは救いです。すがりたい。
とまあ、こういうような話を書いていたところ、necolaus.netさんからトラックバックをいただきました。ありがとうございます。
なるほど、確かにモラルを論拠にせずに解釈すると、色々苦しいですよね……。タイトル的にもメインヒロインが桐乃であるのは間違いないわけですし。
でも一つだけ反論させてください。
黒猫は、桐乃を奮い立たせるため、敢えて自らを犠牲にする覚悟を以て先に告白したのではないか
これは違うかもしれません。
7巻の黒猫のこの言葉が根拠です。
「結局私は、ある人を見習って、自分の欲求に素直になろうと決めたの。思い切り、欲張りになろうと決めた。……きっとあの女ならこんなとき、どちらかを諦めたりはしないでしょうから」
ここで黒猫は桐乃も京介も両方取ると宣言しているからです。この決意はホンモノだと思います。
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投稿者 文月そら : 22:29 | コメント (5) | トラックバック
■[感想書籍]「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」7巻感想
いやびっくりですよ。
何がって、あの例の事前ネタバレでも流れた一番最後の展開のことですけどね。
あんまりびっくりして、死んでたブログが生き返りました。
以下、ネタバレ満載でおおくりしますので、未読の方は回避推奨です。
今回はまた随分とバランスを崩してきたなあ、というのが大きな印象です。
このシリーズはこれまで、恋愛関係にせよ、友人関係にせよ、家族関係にせよ、決定的なひと言は言わずにまわしてきました。まあ、黒猫がキスはしてましたけど、あれも「呪い」という言い訳付きでした。
誰もが自分の好意を相手に伝えることなくここまできたのは、お互いが臆病という言い訳の元、現状に甘んじていたから。何も言わなければ、少なくとも現在のポジションを失うことはないから。それが、京介を中心としたラブコメシステムを支えていました。
最初に桐乃がそのバランスを崩してきたのは意外でした。二度の狂言彼氏騒ぎ、明らかにどちらも、京介の気持ちを量るためにやってますからね。正直、桐乃の気持ちというのは、妹としての好意にとどまるはずだと思っていたので、ここまでの行動に出てくるとは……意外でした。
作中で桐乃自身も言っていますが、この桐乃の行動を触発したのは、麻奈実と黒猫の存在です。
「自分はっ! 自分はっ! 地味子とかっ……あの黒いのとかといちゃついてるくせに! 勝手なこというなっ!」
でもって、この次に、桐乃は気になることを言っています。
「あのときは気持ち悪いみたいな顔したくせに! なんでいまさら! いまさら! そんなこと言うのよ!」
『あのとき』……普通に考えれば、7巻前半の京介とのデート、最後の口論のことを指すような気がしますが、良く考えてみるとちょっとおかしい。
「せっかく俺が嫌々協力してやったっつーのによ」
「おまえの彼氏役なんざ、もう二度とごめんだね」
桐乃を怒らせたと思われる京介の台詞はこのあたり。ウザ顔はしていそうですが、嫌悪感をみせているシーンではなさそうです。
更に『いまさら』という言葉も気になります。『いまさら』という言葉には、もうある程度古い過去のことで、しかも取り返しがつかない後悔のニュアンスがあると思います。……どうも、あの未回収の伏線『押入れの中のまだ見せられない秘密』がからんでいるような気がします。
今回、『妹の彼氏』という存在をテーマに、兄妹がぶつかったわけですが、恐らく次は、この構図がそのまま反転するものと思われます。すなわち『兄の彼女』。桐乃のほうについては、恐らく最後の長電話で、これからする黒猫の告白について聞かされていると思うので、ある程度は冷静に対処してくると思いますが、問題は麻奈実ですね。
京介にとって麻奈実とはどういう存在なのか。京介が常に軽く扱ってきた麻奈実ですが、それでいて麻奈実に彼氏が、なんていう話になると不機嫌になったりして、独占欲だけは発揮してきました。
思うに、京介にとって麻奈実というのは、妹かつ姉のような存在だったんじゃないかと思うんですよね。今回見せた桐乃への執着と近い意味で、麻奈実にも執着してきた。でも麻奈実のほうはそんな気持ちからは一歩も二歩も踏み込んでいるわけで……このすれ違いが、トラブルを生まずにはおかない。これに桐乃との過去もあわせて、京介はこれまでのツケをまとめて払わされる、手痛いしっぺ返しをくらうことでしょう。……あやせと麻奈実とのつながりが、今回わざわざ示唆されたことも考えると、更に恐ろしいことになる可能性も……。
この告白から数日後――
俺と黒猫は、恋人になった。
数日後っていうのがポイントですよね。京介はこの場ではOKしていない。恐らくこの間のすったもんだが、次巻で描かれることでしょう。
――まあ、黒猫派としては願ってもない展開なわけですが、あまりにも都合が良すぎて怖い面もあります。この期に及んで最終的に黒猫振ったりしやがったら京介覚悟しやがれって感じですよ。
ようやく執筆が始まったかどうかというところであるようなので、まだ先でしょうけど、今から次の巻の発売が待ち遠しくてたまりません。
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2010年2月22日
■[感想書籍]『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』(ネタバレあり)
誠に失礼ながら、侮っていた。というのが正直な感想である。
一応このお話の概略は人づてに聞いて知っていた。
曰く、妹がかわいい話である。
曰く、妹はオタクであり、それを隠している。
曰く、有名ニュースサイトの名前が出てきて、発売当初各サイト大騒ぎしていた。
などなど。
それら風評を耳にするにつけ『なんとなく内容は想像つくなあ』『まあ読めば面白いのだろうけど、なんか色々あざとい気もするしなあ』などと思い、結局手を出さずにここまできた。
そんな中、初音ミクの絵と曲から入って、挿絵のかんざきひろ氏のファンになり、コミケで本を買った余勢を駆って、自分の中で再びクローズアップされてきたのが、本作「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」だったのだ。
ということで、買って、実際に読んでみた。
当初の見込みとしては、お約束満載の萌え小説だろうと思っていた。正直、あまり好きなタイプの話じゃないかも、と思っていた。……でも、全然違った。
勿論、キャラ配置や設定をはじめ、いわゆるお約束的な道具立ては結構ふんだんに用意されている。その辺の印象は当初とそんなに違わない。しかし、それを使って描こうとしている部分、フォーカスがあたっている部分が全く違った。
それは、ひと言で言うなら『現代のオタクを巡る諸問題と、そこに生きるオタクの姿』といったものだと思う。
隠れオタクと一般人とのコミュニケーション問題であったり、いわゆる児ポ的な問題であったり、同人活動であったり、才能と嫉妬の問題であったり、オタクであること自体の恥ずかしさであったり。切り口は各巻様々だが、我々にとって結構重いテーマが、明るく、しかし真摯に描かれている。
そこに描かれる登場人物の姿も魅力的だ。彼らはオタク非オタクを問わず、思想的な対立はあっても、皆根本的には誠実で優しい。こだわりや信条、コンプレックスや偏見で時に強く対立することはあっても、皆最終的には相手の話を聞く耳を持っている。
主人公は実は非オタなのだが、彼の持つ眼差しの優しさも素晴らしいと思う。彼にはどんなに素直じゃない人間が相手でも、自然にその良さを見抜ける目がある。それなのになんで妹のことだけ散々延々と誤解し続けてたんだとも思うが、まあ身近すぎたんだろうし、その辺は語られないエピソードがありそうだ。特にアルバムのあたりに。
まあ正直なところ、現実はそんなに甘くねえですよとも思わんこともない。世の中そんないい人ばっかりではないし。……でも、それはそれとして、主人公を囲む、オタクや非オタクたちの優しい世界が、私は嫌いじゃない。
とりあえず、気配り超人こと沙織の正体と、完全な一人勝ちかと思われたヒロインレースに、最新刊で突然大外から物凄い足でまくってきた黒猫の今後が気になる作品です。
あ、一つ書き忘れたけど、タイトルから連想されるような「妹の正ヒロイン昇格」だけは絶対無い作品です。どう転がっても互いの甘えから抜け出せずに不満を溜め込んだり、当り散らしたり、すれ違ったりしてしまう。家族としての兄妹の距離感の描き方も、この作品の見事な点だと思います。
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投稿者 文月そら : 02:20 | コメント (2) | トラックバック
2008年10月13日
■[アニメ感想]今期アニメ雑感
■とらドラ
とりあえず第一話観て小説版を全巻読破しました。面白かった。
で、その目で第二話を見ると、ちょっと展開が早すぎる気がしました。
とらドラって心情劇であって、出来事の流れそのものは割りと平凡だったりするので、第二話の、モノローグ省いて出来事を羅列したような描き方だと魅力が伝わりにくいんじゃないかと危惧。
特に告白シーンでの竜児の『並び立つ葛藤』みたいなものは見せて欲しかった。
■喰霊
第一話のみ視聴。
原作は全く知りません。しかし意外な伏兵。
久々にAICの本気を観た。
物凄く気を惹く初回。先の展開がまるで読めません。
とりあえずタイヤのトレッドパターンで浄霊するアイディアは初めて見た。
■ガンダム00セカンド
第一話のみ。
現時点では何も分かりません。
ルイスどうなっちまったんだ。あとセルゲイ家の家庭の事情萌える。
■テイルズ オブ ジ アビス
原作未プレイ。
藤島絵からすると主人公まわりのキャラデザがちょびっと違和感かしら。
でも丁寧に作られていると思う。
割と期待してます。
■クラナドアフター
まだ第一話のみ。
芳野さん大好きすぎる。
国崎最高。
ゆきねえがいないことに涙。
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