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2012年10月26日

[感想書籍]「マグダラで眠れ」 「マグダラで眠れ」

 「狼と香辛料」で有名な支倉凍砂さんの最新作「マグダラで眠れ」のご紹介です。
 前作が交易をメインにした『旅と商人としっぽの物語』であったのに対して、今回は『神と錬金術師とケモミミの物語』とでもいいましょうか。
 先日2巻が発売されたのですが、これが抜群に面白かった。
 錬金術とは言っても、鋼とか焔とか等価交換とか真理の扉とかそういうのではなくて、かつて本当に実在した、科学の先祖としての錬金術。中でも金属精製をメインとした冶金術です。
 鉛の精製方法とか、そこから貴金属を取り出す方法とか、更には鉛の鉱山であっても、金銀の含有量こそが採算性を決めるとか……。なんせ、そんな方面の知識なんぞありませんから、提示される蘊蓄のいちいちが興味深かったです。相変わらずの綿密な取材と、それに基づく緻密な世界構築には頭が下がります。
 面白いのは、香辛料の時にロレンスが所属していた商人コミュニティと錬金術師とは、全然違う立場なんですよね。商人は良くも悪くも町の秩序・経済・日常を司る存在であるのに対して、錬金術師は混沌・禁忌・非日常を表す存在なんですね。
 そりゃまあ、神様の存在が一般的に信じられている世界において、その神様の啓示とは別の法則や秩序の存在を、禁忌に踏み込むことも辞さず求め続ける人間というのは、さぞかし普通の人にとって気味の悪い存在であることでしょう。作中での主人公クースラの扱われからからも、大釜にあやしげな薬を混ぜ合わせてよからぬ術をたくらむ魔女と区別がつかないんだろうな、ということがよく伝わってきます。
 クースラは科学者のはしりであり、クールで利己的で理性的な存在として描かれていますが、もう一方で、どうしようもなくロマンチストでもあります。まあ本当に理性的な人はオリハルコンなんて追い求めないし、姫を守る騎士としての自分なぞ夢想したりはしません。
 それに対してヒロインであるフェネシスは、虐げられてきたわりに、やけに素直で世間知らずで何色にでも染まりそうな、文字通り真っ白な修道女。しかしあまり口を開かず、クースラのからかいにぶんむくれながらも錬金術の修行に打ち込む姿はかなりの頑固者であることも示しています。
 冶金術の不思議さ、面白さと、互いに別の意味で社会からはみ出し、忌み嫌われてきたにも関わらず、妙に純粋なところのある二人の行く先。どちらも興味深く、続きが楽しみです。

 2巻はダマスカス綱をめぐるお話でした。日本の古刀、中国の青磁なんかもそうですが、現代では製法の失われた遺物、ロストテクノロジーの浪漫たるや半端ないですな。
 必ずしも、過去より未来が優れているわけではない。そんなことをキュンキュン思い出させてくれる一冊でした。

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投稿者 文月そら : 22:54 | コメント (0) | トラックバック

2012年9月17日

[アニメ感想]今週の聖闘士星矢Ω:アリアや光牙の正体について(ネタバレ) 今週の聖闘士星矢Ω:アリアや光牙の正体について(ネタバレ)


 光牙とアリアが空から降ってきたということで、どうも人間じゃないらしいということが判明しましたね。元々アリアについては、小宇宙がアテナの身代わりが務まるほど大きいことから、神様じゃないかと思っていて、月の女神アルテミスあたりが有力かなあと思っていました。この女神さま、弓術・森林・狩猟・純潔の神であり、処女神にも関わらず、豊穣を司る大地母神の性質も持つ珍しい神様です。

 で、仮にこれが正しかったとすると、対になって降りてきた光牙は、太陽神アポロンなんじゃないかということになります。なにしろ、アルテミスはアポロンの実妹ですから。太陽と月という対比でも、ありえそうな話です。また、二人とも光の属性の小宇宙を持つあたりも根拠として挙げられます。ただ、いわゆる天界編でアポロンもアルテミスも敵として出てきちゃってるんですが……まああれは序章で終わっちゃったから、なかったことになったのかも。
 もしそうなら、光牙とアリアは実の兄妹ということになり、通常はカップリングとして成立しないということになります。……つまり、アリアの正式な相手は、実はエデンなんじゃないかと……。そうだとすれば、今日の話のあの光牙側の悪役っぽさも理解出来ます。
 しかし、ここでも多少の問題が生じます。エデンは明らかに敵であるところのマルス(アーレス)の息子であり、このマルスもゼウスを父とする、しかし母親は異にするアポロンとアルテミスの義理の兄弟です。
 つまり二人にとっては甥にあたる神格であり、3親等以内の傍系親族であるため、原則結婚できないこととなります。但し、実際の血縁がある場合との限定もあり、異母兄弟経由だとどうなるんだろう……。まあでも神様が人間の法律に縛られはしないかな。

 ちなみにソニアについては、アレスの娘であることから、おそらく調和の女神ハルモニアー。エデンは恐怖と敗走(!)の神フォボスか、恐怖の神ダイモス、あるいはエロース(キューピッドの起源)のどれかでしょうね。

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投稿者 文月そら : 12:16 | コメント (0) | トラックバック

2012年9月 8日

[感想書籍]俺の妹がこんなに可愛いわけがない11巻ネタバレ感想 俺の妹がこんなに可愛いわけがない11巻ネタバレ感想

 桐乃が兄に幻滅したという大まかな形そのものは、事前の予想通りでしたが、いやこれ麻奈実の犠牲でかすぎるだろ……というのが過去編を読んだ感想です。

 麻奈実は、恐らくは麻奈実と桐乃、二人のヒーローだった京介が、等身大の当たり前の人間であることを許しました。本来、母親なり、祖母なりが担うべき『ありのままでいい、つまらない人間でもいい』という絶対的な存在の肯定。そんな達観した立場に、中三にして立たされた麻奈実が痛々しかったです。
 これで結局、京介がヒーローを辞めた代償として、麻奈実は京介の保護者としての立場から降りられなくなってしまったんじゃないでしょうか。
 3年前の描写をみると、京介が麻奈実におばあちゃんネタを振ったとき、麻奈実も京介におじいちゃんと返す、応じネタをもっていました。しかし、現在では京介が麻奈実をおばあちゃんと呼ぶばかり。一方通行になってしまった関係に、いびつなものを感じてしまいます。

 あくまで私は黒猫派であり、黒猫エンド以外は見たくないんだけども……抱擁・肯定・号泣。みっともなさも情けなさもすべてを受け入れて「好きだ」とまで言ってくれた麻奈実をその後放置とか……ちょっとどうなんですかね京介、男として。

 なんでこうまで麻奈実に不憫さを感じてしまうかというと、実は黒猫も、似たような立場に立たされているからなのかもしれません。一度は『京介の彼女』の座を射止めながら、みんなが幸せになれるように、京介と桐乃の気持ちをおもんばかって身を引いた黒猫。割と麻奈実の場合と相似形なんですよね。
 こうして、やたら京介(及び桐乃)に甘いハーレム状況が、麻奈実と黒猫の犠牲の下、成立したのです。
 ……というか、どうしてもこういうイヤな解釈がちらついてしまうんですよね。
 最終巻開始時点で、京介が誰でも選べる状況を作るために、麻奈実は保護者であり続けることを、黒猫は身を引き別れることを強いられたんじゃないかって。
 だって、二人とも、あまりにもエゴがなさすぎるじゃないですか。

 これで麻奈実か黒猫が選ばれないとするならば、彼女たちは全くの自滅としか言いようがなく、加奈子と麻奈実のあのやりとりが本当にシャレですまなくなってしまうなあと不安に思うわけです。

「加奈子に言わせっと、野良猫とかゆーアホは救いようのないバカっすね」

「あはは。じゃあ、わたしもバカだね」

 思いやりのある人間ほどバカを見るような結末にはなってほしくないと祈るばかりです。

 ラストシーンはちょっと面白かったですね。麻奈実・加奈子・黒猫・あやせが、かわるがわる、自分と京介、そして桐乃の関係についての所信を表明する様は、まるで営業が客先に競合プレゼンしているみたいだと思いました(笑

 さて、次はいよいよ最終巻。京介は誰を選ぶのか、とにかく最低限きっちり決着をみせてほしいと思います。

 京介が誰かに告白をする。でもその相手は誰だか分からない……とかいうのだけはやめて下さいね!

 そういえば、どう考えても某シンデレラなニートアイドルが元ネタと思われる新キャラ、櫻井秋美さん。
 秋の、桜。
 秋桜といえば、コスモスですね。
 コスモスの花言葉は『少女の純真・真心』だそうですよ。……なんか振られるためだけに出てきたような感じもする彼女ですが……これまた不憫すぎる。

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投稿者 文月そら : 02:06 | コメント (0) | トラックバック

2012年9月 2日

[感想書籍]境界線上のホライゾンV<上>境界線上のホライゾンV<上>


 昨日の時点では左のメニューバーがまるっと消えていたのですが、無事に不具合が直りました。
 ということで、ホライゾンの話でもしましょうかね。

 アニメの二期も好調でなによりですわ。
 正直な話、独特すぎる世界を持つホライゾン、というか川上氏の作品群がここまで広く受け入れられる日が来ようとは思いませんでした。
 先日の夏コミでも、ホライゾンサークルが目白押しでしたし。
 ……残念ながら、ミリアムの本はほとんど見あたりませんでしたが。(既刊のみ一冊確保)

 で、盛り上がっている中の五巻上発売。思っていたより薄くて驚きました。
 恐らく業界でも屈指の生産力を誇る川上氏でも、DVDブルーレイの特典小説は100頁を超え、ドラマCDやらコミック、果てはフィギュアにまで小説をつけていて、近々巨大な設定資料集も出るとのことですので、さすがに戦力の集中を欠いたということでしょうか。
(※五巻上は702頁)

 内容については……なんつうか森君が出てきてから、こいつのエピソードは一体どこにたどり着くんだろうかという点が気になって仕方がありません。
 某所で玄武との関連を指摘されていましたが、なるほど玄武は蛇と亀。触手的な意味でもタートルネック的な意味でも適役と言えましょう。しかも確か玄武って交尾中の暗喩があったし、ナチュラルボーン卑猥な森君にはうってつけといえましょう。
 まあ、異族の多い川上氏の作品ですけども、まさか触手知性体が登場しようとは……。直政とのフラグをやたらとアピールしては硬くなって震えていますが、出てくる度必ず卑猥というのはどういうことなの……。というかアニメに出せるのコレ……。

 直政との関係が進展するとは思えないし思いたくないが、何もないなら出てこないだろというのが頭から離れず困ります。

 

 予×ミリアム的な意味では全く何もありませんでしたね。
 外に出て買い物をする三人の姿が双嬢に目撃されて、ナルゼのネタストックに入っただけです。セリフすらないんでは妄想のしようがないです。
 ただ、ミリアムが部屋の外に出ている姿を描写されたのは初めてだと思うので、そういう意味では貴重かも。

 近々、おそらく本能寺あたりではミリアムのイベントが進行するんじゃないかと思いますので、今回は出番が少なかったのかなと思います。

 ラストで、いるのかいないのか気をもんでいた真田・信之が突然登場してでっかい爆弾を炸裂させましたが、これからどうなるのか、一層楽しみです。

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投稿者 文月そら : 01:32 | コメント (0) | トラックバック

2012年4月12日

[感想書籍]俺妹10巻……。俺妹10巻……。

俺の妹がこんなに可愛いわけがない10巻、読みましたよ。

うーん……。
まあ、ギャグは面白かったです。
相変わらず脇の甘い京介がいろんな人につっこまれまくる様とか。

でもなー。
ちょっとハーレムにもほどがあるというか。
世界があまりにも京介に劇甘すぎて、ちょっとついていけないというか。

ひとつにはPSPで全員ヒロインになるゲームとか出しちゃったのがまずかったのかもしれないですね。
変に希望を持たせてしまったから。
だからこんな、全方面外交みたいな、全てのヒロインのファンに配慮したような展開に行き着いてしまったのかも。

まあ、いよいよ過去バラシに入るみたいなんで、この先には厳しい現実があるのかも知れません。
あとがき曰く、今回は全三巻の第一巻だそうなので。

終盤、タイトルの『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』を京介が口にしたあたりで、ああ、最後の展開の口火がきられたんだなと思いましたよ。

まあ、ここまでヒロイン増えちゃうと、鈍感主人公を続けるにも無理がある(実際今回はかなりひどかった)ので、さすがにそろそろ決着つけてくれることでしょう。

早く12巻が読みたいです。

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投稿者 文月そら : 01:28 | コメント (1) | トラックバック

2012年2月21日

[感想漫画]道満清明「ニッケルオデオン【赤】」を読みました。道満清明「ニッケルオデオン【赤】」を読みました。

なんだかもの凄くポップな「ねじ式」という印象。
虎がしゃべったり、手首が歩いたり、なんかさりげなく常識が崩壊した世界で描かれる、終始変な漫画。
オビの「ヘンなお話、あります」というのはとても的確なコピーだと思います。
8P1話の読み切り13編ですが、なにげに登場人物は共通していて、そこはかとなく世界が広がっているのが好みです。
【赤】ってことは他の色も出るんでしょうか。楽しみですわ。

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投稿者 文月そら : 01:34 | コメント (0) | トラックバック

2011年12月23日

[感想書籍]貝木泥舟というロマンチスト(化物語『恋物語』ネタバレ)貝木泥舟というロマンチスト(化物語『恋物語』ネタバレ)

いやー。見事に騙されましたわ。
西尾維新氏が読者の裏をかくのが大好きだということを考えれば、戦場ヶ原が語り部だなんて予告をくつがえしてくることくらい予想しておくべきでした。
この件から私が学ぶべきことは、経験から学べ、お前はまよいキョンシーの経験を生かすべきだった、ということでしょう。

そんなこんなで冒頭からしばらく、貝木にあざ笑われている間中ケラケラ笑っていた訳ですが、読み終わってみればその貝木のイメージが180度転回してひっくりかえってしまいました。

面白かった。

語れば、言葉にすれば、全ては嘘になってしまう。
それは絶対的な真実です。

例えば私はこの作品をとても面白かったと思ったけれども、全部が全部一言一句句読点の使い方に至るまで全てが気に入ったかというとそういうわけではない。
ここでいう面白かったというのは総括的な感想であって、ディテールのレベルでは好きではない部分だって存在している。
あるいは解釈と見方を変えれば、この作品は嫌いだという感想すら語ることが可能です。

かように言葉というのは脆い物です。

でまあ、貝木は作中、嘘だ嘘だと連発しながら物語っていくわけですけど……。

撫子に貝木は言います。

かけがえのない大切なものが嫌いだと。
かけがえのある大切なものであるお金が大好きだと。

……これって要するに、かけがえのない大切なものを、大切だと言葉にしてしまうことで、嘘になってしまうことが嫌なだけなんじゃないですかね。
だから、ひたぎのことを助けたかったとも言わなかったし、ましてや愛していたなどと言うはずもない。

そうだとしたらもの凄いロマンチストですよね。
阿良々木くん以上だ。
今回は阿良々木くんコテンパンですね。貝木にあらゆる意味で負け切った感がある。
ひたぎとの関係においてすら……。
『今も昔も、あなたは私に嘘をついたことはなかったわ』に至るやりとりとか、『敵』に戻るための二人の間での線の引き合いが、何か美しくすらありました。
こういう大人の貫禄を見せつける展開、好きなんで。
まあ阿良々木くんはまだまだこれからの少年……いや、青年ですからね。


――とまあ、そんな感じで貝木に見事に感情移入させられたと思ったら、あのラストですよ……。

どういうことなの……。

仮に花物語の時点での貝木が幽霊だったとするならば、沼地蝋花、貝木泥舟と、比較的数少ない登場人物の2人までが幽霊だったことになるんですが……。

でも死んでいてほしくないな……。
特に、なんか意外なほど仲良しっぽい忍野との会話が見てみたい……。

それにしても面白かった。
セカンドシーズンで一番好きな花物語と同じくらい好きです。
……あ、もちろんこれは嘘じゃないですよ。嘘じゃない部分だらけです。

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投稿者 文月そら : 01:29 | コメント (0) | トラックバック

2011年12月12日

[アニメ感想]アニメアイマスの23話が凄かった(ネタバレ)アニメアイマスの23話が凄かった(ネタバレ)

 私アニメは基本録画でみているので反応が遅くてアレですが。

 アイマスの23話はもの凄い話だった。

 私はアニメ版のアイドルマスターっていうのは群像劇だと思っていました。
 各キャラに担当回があることでもそれは明白ではあるのだけど、この一話でそれら全てが同時に春香の物語としての意味合いをも持ちました。
 パタパタパタっと一気にひっくり返った。
 ぞくっとしました。こういう展開すごく好き。

 アニメはゲームと違って765プロ所属アイドルが全員で一つのユニットを組んでいるような設定ですね。
 そのため、全員主役では難しいので、キャラクタの性格もいくつか改変されています。
 まあ、誰より強いプロ意識を持っているはずのやよいが、運動会前後で随分と弱気だったりするのはその顕著な例であると言えます。
 その点、春香も多少変わっていて、どちらかというとファンとの関係を大切にするほうだったと思うのですが、春香は765プロという場を何より大切にする性格になっています。

 これまで765プロのメンバーが苦境に陥ったり、困ったことがあると、いつでも春香が誰より早く手をさしのべて切り抜けてきました。
 もうプロデューサーいらないんじゃないかってくらい。
 あの人数を、プロデューサー2人で、マネージャーもつけずにまわしている765プロとしては、春香の存在は本当に貴重だったことでしょう。

 そんな春香にとっての、765プロ結束の象徴がクリスマスライブなのでしょう。
 それぞれが成功をつかみ、みんな忙しくなってくると、必然的に765プロとしての活動がおろそかになる。そりゃそうですね。みんな本当の目標は個人個人のアイドル業であって、プロダクションというのは本来そのためのサポート組織でしかない。

 でも春香にとっては、そうじゃなかった。

 何よりも765プロが大切だった春香は、忙しさの中でいつのまにか省みられなくなっていく765プロに、一人残されていました。
 しかも、そんな春香自身すら、次第にクリスマスライブの準備に参加できなくなっていく。……自己矛盾に苦しみます。
 よく分かるんですよ。自分が大切にしている活動に人が来なくなるせつなさ。サークル活動でもクラブ活動でも、委員会活動でもいいですけど、決して責められない理由で幽霊部員化していく友人を思うのは、本当にせつないです。

 でも765プロの成功は、そんな春香の765プロへの思いがベースになって、みんな春香に支えられて今がある、それが今まで描かれてきた。そんな春香が一人だけ取り残されている。

 そこにきてP落下ですよ。落ちんな。
 まあ、今回は春香を助けてのことですから仕方ないですけど。
 追い詰められるどころか、とどめを刺された感すら漂う春香。

 多分、次からこれまで春香が必死で守ってきた765プロが、春香を救う展開が待っているのだと思います。
 割としょっちゅう最終回みたいな盛り上げ方をする作品だったので、最後どうやって締める気なんだろうとちょっと心配していましたけど、これなら確かに、今までの全ての話を受けてのフィナーレが描けますね。楽しみ。

 そういえば、961プロを辞めたジュピターが801プロでいろいろ再起する展開はまだですか。

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投稿者 文月そら : 20:22 | コメント (0) | トラックバック

2011年12月 5日

[アニメ感想書籍]『境界線上のホライゾン』よもやま話2(自重しないVer.)『境界線上のホライゾン』よもやま話2(自重しないVer.)

 なんか意外とホライゾンで検索してこられる方がおられるので、ホライゾン話をもう一度やってみようかと。

 ホライゾンを楽しむコツは、わからんとこはすっとばして自分の好きなところを中心に見ることだ、というお話を前回したと思うんですが、では私が具体的に何を中心にホライゾンをみているかといえば、余こと東と、車椅子のミリアムと、幽霊少女の折りなす擬似家族コントです。
 いかんせん話の本筋と今のところあんまり関係がなく、しかも4巻中現在でも幽霊少女の正体がまるで分かっていない等、不明な点も多いため、アニメでは残念ながら省かれがちです。
 しかし、箱入り、というか世俗と完全に切り離されて育ったせいで全く性的なことについて知識のない東と、「女の子が攻略できるなんて思い上がりよ。世の女の子は、がんばる男の子をみて難易度を下げてあげるのよ」などと嘯きつつ、物凄い勢いで難易度が落下し続ける系女子、ミリアムのラブコメがたまらなく好きなんですわ。
 実は、ミリアムの正体が某超有名人の襲名者だという考察もあったりして、しかもそれが結構説得力あったりするんで今後が不穏な気もしますけど、まあ東がなんとかするでしょう。というかしろ。
 さらに、これは前作もそうだったんですけど、この作品は他にも、ものすげえ沢山カップルが登場するんです。
 しかもそれぞれがそれぞれなりにラブラブすぎてたまらん。男女カップルはもちろん、女性同士だったり、今回は今のところ男性同士ってのはないけど、とにかくあっちゃこっちゃでラブが米っているので、ラブコメ好きとしてはたまりません。
 しかも大体マンツーマンラブなので、ギスギスしたところが全然ない点も個人的に評価を高くしているところです。でもとりあえず点蔵は爆発しろ。

 ここで根本に立ち返って、境界線上のホライゾンという物語がどういう物語かといえば、意思の物語であると言えると思います。
 アニメでやったところですと、自動人形の鹿角さんと本多・忠勝が身を捨てて本懐を遂げるシーン。
 目の見えない鈴がホライゾンの思い出を語り、ホライゾンを助けてと訴えかけるシーン。
 敵側だったはずの正純がトーリに「必ずホライゾンへの道をつけてやる」と宣言するシーン。
 ああいう、強い意志が道理をけっとばすシーンが、いつも力強く描かれています。
 ホライゾン世界は末世という、まあ平たく言うと世界の破滅、消滅へ向かって進んでいる世界です。
 その滅びの運命に、意思ある者達が、それぞれの立場で抗う物語。

 そういうところが、私は好きです。

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投稿者 文月そら : 01:26 | コメント (0) | トラックバック

2011年11月23日

[ゲーム感想]elonaたのしいelonaたのしい

 最近、elonaというフリーのローグライクゲームをやっています。
公式ページはこちら。
http://homepage3.nifty.com/rfish/elona_top.html

 ローグライクといっても、いわゆる風来のシレン系統じゃなくて、ローグ版ウルティマオンラインみたいなゲームです。
 ちなみに、elonaというタイトルですが、別にえろくないです。

 もうとにかく自由度が高くて、一応世界の命運をどうたらする系のメインストーリは存在しているんですが、別に全く無視してもいい。
 ゲームをはじめるとチュートリアルがあるんですが、これも放置してもいい。
 戦士、魔法使い、盗賊などになって冒険をしてもいいし、巻物とか杖とかを作って、店に出して商人をしてもいい。店を持たずに各町の交易品を、価格差を利用して売り買いする行商人になることもできる。
 単に観光客としてうろうろしててもいいし、人を殺しまくったり盗みまくって、お尋ね者になってもいい。売春すら可能。
 プレイ可能な種族は人間やエルフ系はもちろん、妖精、ゴーレム、果てはかたつむりなど基本種族だけで11種族。職業はおなじみの戦士魔法使いにはじまってピアニストに観光客なんてのもあります。

 まあ、空腹、飢え死にの概念があるので食わなければならないし、犯罪者になる覚悟がないなら毎月税金を納めなければならない。
 だから必然的にある程度稼ぐ必要は出てくるけれど、それ以外は本当になにをしていてもいいゲームです。

 先ほどウルティマオンラインの名前を挙げましたが、要するにああいう、ゲーム世界に住むゲームです。
 ただし、オンラインゲームではないので、仲間が待っているからとか、義務があるから、とかいった理由で縛られることもありません。黙々シングルプレーできます。

 ただ、決して取っ付き易くはないです。
 自由度が高い分、コマンドは多岐にわたりますし、世界観がすごく独特なので、絶対に最初はわけがわかりません。プレイ動画とかを観てからプレイすべきです。

初心者向けおすすめプレイ動画はこれ(ニコニコ動画)。安心のやる夫シリーズ。
でもって攻略Wikiはこれ

 ちなみに、私の使っているキャラは当然のように美汐という名前なんですが、ランダム生成の異名付けでかなり粘って「狐の奇跡」という異名を出せたことに大変満足しています。
 ……でもこのゲーム、油断するとすぐ異形化してしまうので、首が太くなったとか、目が4つになったとか言われるたびにリセットしてます。正直他の名前にしときゃよかったとも……。
 そんなわけでなんか今、美汐さん羽生えちゃってるんですが、それはかわいいので放置してます。

 最後に、4gameに古い紹介記事があるので、張っておきますね。
http://www.4gamer.net/games/040/G004096/20080627031/

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投稿者 文月そら : 23:47 | トラックバック

2011年11月19日

[アニメ感想書籍]『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』ブームは何故落ち着いてしまったのか『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』ブームは何故落ち着いてしまったのか

 8巻発売直前までの俺妹(俺の妹がこんなに可愛いわけがない)は、まさしく絶頂期だったといえるでしょう。

 割と運次第なアニメ化もそれなりの高評価を得、新規読者が増えた上で、7巻最後の黒猫の告白から今後の展開がどうなるのか、に、大きな注目が集まり、方々で全身全霊を傾けた議論、煽り合い、多数派工作が展開されました。

 そして8巻発売。

 内容自体は理解できる。という話は発売当初の感想にも書きましたが、私自身としても、あるいは周囲のファンの反応を見ていても、あの後、色々落ち着いてしまった感が否めません。
 実際、9巻もちゃんと読んでいますが、感想エントリは書かずじまいでした。

 思えば黒猫の告白、およびその後の交際開始展開には、もの凄い締め切り効果が働いていたと思います。
 これまで微妙なバランスの上で、ある意味十年一日のごとく成り立っていた京介をめぐる人間関係が、確実に一歩前に進み、(黒猫がそのまま彼女になるのか否かはともかく)ついに何らかの結論がだされるはずだという期待、あるいは予感が強く働いたのです。

 そうなると、近い将来、おそらく9巻あたりまでには出されるであろう(と当時思っていた)『結論』をめぐって、ファン心理は加速しました。
 見えてきてしまったゴールが、自分の期待するモノなのかどうか、最高潮に高まった不安と期待は……しかし8巻で、肩すかしをくらうことになりました。

『なんだ結局、当分結論は出ないのか』

 この感想は、それぞれ立場は違えど、多くの読者に共通するものだったのではないでしょうか。

 7巻発売以前の状態に戻っただけとも言えますが、ここがクライマックスかとばかりに盛り上がった以上、元の木阿弥状態にはやはり残念さが漂います。

 まあ、9巻の日向の『高坂くん超かっけー』が何を意味するのかによっては、次巻あたりで大きな動きがある可能性もありますが、散々踊らされた後だけに……あんま期待はできないかなー。

 演出論的な話になりますけど、読者はフィクションに、何らかの刺激(感動とか恐怖とか共感とか成功体験とか絶望とか、あとかわいいとかエロとか)を求めています。
 京介に彼女が出来るというイベントは恐らく本作中最大の刺激を読者にもたらすカードです。
 ただし、これを不用意に使ってしまうと、それ以降、作中で何が起きても物足りないということになってしまいかねません。
 最大級の刺激をすでに受けてしまっているために、読者があらゆることに慣れてしまうのです。
 今後、京介に本当に彼女ができても、すでに一度体験してしまった刺激なので、インパクトはどうしても薄れます。
 この最強のカードを、不完全燃焼な形で使ってしまったことは、俺妹という作品のファンとして、残念だなあとどうしても思ってしまいます。8巻、9巻を読んでから時間が経つにつれ、一層そういう念が強くなりました。

 正直、結論を出さないのなら、あのままずっとラブコメしていてほしかった。

 もちろん今後も読んでいきます。
 私なんぞの浅薄な懸念を吹き飛ばすような展開を期待しています。

 当方に土下座の用意あり。

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投稿者 文月そら : 16:33 | コメント (0) | トラックバック

2011年11月18日

[アニメ感想書籍]『境界線上のホライゾン』よもやま話『境界線上のホライゾン』よもやま話

 現在絶賛アニメ放映中の境界線上のホライゾン。
 最初アニメ化するって聞いたときは正直耳を疑いました。
 だって(一応この世界の歴史を下敷きにしているとはいえ)完全に異世界の話で、オリジナル設定だらけですから、アニメという媒体には最も向かないタイプの話だと思ったからです。
 まあ単行本の厚さを見てもアニメ化に向かなそうだというのは分かると思いますけど、本当のところを言えばホライゾンシリーズの内容を全部読んですら設定を語ることは出来ず、その前の『終わりのクロニクル』さらに前の『都市シリーズ』まで含めた、というかホライゾンが終わったあとも続いていくロードマップがすでに存在する、壮大過ぎる歴史サーガなんですよ。
 もう絶対に既存ファンだけしかついて行けない内容になるに違いない……と思っていたんですが、実況まとめサイトなんかを見ると、意外と新規の人も残っているみたいですね。
 まあ、川上稔氏の作品群を読むときの鉄則は『わかんなかったら読み飛ばす』なので、アニメで細かいことを気にしないで好きなとこどりをして観る、ということができた人には、氏の作品は会うかも知れません。
 なんせ、既刊全部読んでいても、突然新設定が出てきて、初読時には全く意味が分からないなんてこと、日常茶飯事ですから……。
 アニメはどこまでやるんですかね。1巻最後までかな。

 2巻行ってイギリスに行ってしまうと、薬中詩人ベンジョンソンさんという、非常に物議をかもしそうな人がでてくるので心配です(笑
 ええ、某陸上選手の話じゃないですよ。歴史上実在した、詩人のベンジョンソンです。あの人とは関係ないです。ええ、きっとそうです。

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2011年11月15日

[感想書籍]『神様のメモ帳8』杉井光『神様のメモ帳8』杉井光

 いやね、もう続き読むのやめようと思ってたんですよ。
 ちょっと彩夏放置が酷すぎないかと。

 まあ、変に事件に関わらせると、記憶が戻って大変なことになりかねないというのは分かるんですけど、それにしたって彩夏があまりにも蚊帳の外すぎる。むしろメオとかのほうが目立つ有様。話そのものは面白いんですけど、なんか読んでて辛くなってきたので、7巻を読み終わったところでもう8巻を買うのはやめようと。

 ところが書店で一応手にとって、折り返しを見てみたら……おいおい、彩夏かかわっとるやん……。

 帰ってきた悪夢との対決。
 そしてラストの4人で迎えた大団円。

 もう何よりも、これからは彩夏がハブられなさそうだというのが一番嬉しい第八巻でございました。まあ、彩夏も、全てを取り戻したわけじゃないにせよ。

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2011年11月14日

[感想書籍]『冷たい校舎の時は止まる』辻村深月『冷たい校舎の時は止まる』辻村深月

 書籍の感想には、書影やらアマゾンリンクやらをはるようにしてたんですけど、結局そういう手間があるもんだからよけいに更新しなくなるんだとわかったので、今後は字だけで、もっと気軽に感想書いてみようと思いました。

 さて。
 『冷たい校舎の時は止まる』
 辻村深月さんのメフィスト賞受賞作です。
 考えてみるとネタバレしないで感想を書くのが非常に難しい作品なわけですが、丁寧な作風に好感を持てます。レベルEの某話を下敷きにしているんじゃないかと思うんですが、その一ネタにとどまらず、重層的に伏線を巡らせる、非常にテクニカルな作風です。
 今時珍しく、いわゆる『読者への挑戦』があって、材料が出そろったところで犯人が誰なのかをストレートに問いかけてきます。
 私の成績としては、仕掛け人は分かったんですけど、とあるキャラクタの役割を完全に読み違えていて、読了後に思わずやられたとつぶやきました……。
 それでいて語り口は軽快かつ読みやすいところも良いです。
 割と長いお話ですが、ホライゾンよりはましです。長さ相応の読み応えもありますので、是非オススメしたいと思います。

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投稿者 文月そら : 23:19 | コメント (0) | トラックバック

2011年6月26日

[ゲーム感想]【Steins;Gateネタばれ】鳳凰院凶真という存在【Steins;Gateネタばれ】鳳凰院凶真という存在

観測範囲内にシュタゲプレイ中の人がいたりしたので、なんとなく完全ネタばれをさけていたのですが、その人もめでたくシュタインズゲートに到達したということで、全開のネタばれをお届けする環境が個人的に整いました。

今回は鳳凰院凶真という存在についてお話しようと思います。


 
 
 

鳳凰院凶真。

祖母を失い、この世界への興味を失ったまゆりを、この世界に引き戻すために、二人の間にあったファンタジーを具現化した存在。
まゆりを『人質』とし、世界を自分の都合で振り回す、天才マッドサイエンティスト。
自分よりも強く、自信にあふれ、常に夢を語る道化。
元々鳳凰院凶真というのは、彼と、彼の仲間を守るためのトリックスターとして生まれたのです。

でも、そのまゆりが収束する死の運命から逃れられないとなった時、鳳凰院凶真の幻想は全くの無力でした。結局彼自身は平凡な大学生でしかなかったからです。

世界を振り回すことなぞできない。
いや、たまたまできたDメールで振り回すことはできても、仲間を守ることなんてちっともできない。
まゆりを助けることもできない。
それどころか鈴羽の、フェイリスの、るかの願いを、思い出を消し去る羽目にすらなります。

思えばトゥルールート前までの岡部倫太郎の戦いは、ひたすらマイナスをゼロにする戦いでした。
やったことといえば、とにかく送ってしまったDメールを打ち消すことだけ。
そしてようやく戻った『始まりと終わりのプロローグ』には、今度は紅莉栖がいない。

でも、一つだけスタート地点と大きく違うことがありました。
紅莉栖が大切な存在になっていたということです。

もうこれはゼロに戻ったとすら言えない。
むしろ、岡部個人としてはマイナスかもしれない。
それでも、この戦いを『負け』とするわけにはいかない。
そんなことをしては、これまで踏みにじってきた思いを、本当に無にすることになるからです。

だから岡部は、無力さに死にきった鳳凰院凶真を無理やりたきつけ『勝利宣言』をして世界線を移ってきたのです。

まゆりの時は、少なくとも指針がありました。
歪めた過去を正せば、助けられるはずだという。

でも紅莉栖の場合にはそれがない。どうしたらまゆりも紅莉栖も死なせない世界線にいけるのか分からない。
砂漠の真ん中から装備無しで抜け出そうとするようなものです。
できるかもしれない。でもその前に力尽きてしまう可能性のほうが大きい。

それでも一縷の可能性にかけてみたら、他ならぬ自分が紅莉栖を殺す羽目になってしまった。

できるはずがない。
常人にはとてもできない。

……それでも、岡部は結局諦められなかった。
設定資料集によれば、この世界線においても、タイムマシンを完成させたのはダルだという話です。
でも、このミッションに必要なのは、完成したタイムマシンだけではありません。
歴史をどう変えれば世界線を移動できるのか。その確証がなければ全ては無駄です。

岡部は、自分の特性である『リーディングシュタイナー』を研究し、世界線理論を完成に導いたのでしょう。
その証拠は、あの動画Dメールです。
オープニングで受信したときは文字化けしていましたが、携帯の一画面に収まる程度で明らかに動画としては情報量が少ないです。
これは小説版によれば、無数の世界線に32バイトずつ動画を送信し、目的とする世界線の、目的とする時点で再構築するという超技術だそうです。なんだそれ。尋常な話ではありません。
同じく岡部が発明したというダイバージェンスメーターも相当滅茶苦茶な発明だと思いますが、そんなレベルは完全に超越しています。

元々タイムリープマシンの発案は、紅莉栖でもダルでもなく、岡部なわけですし、彼は彼なりに、やはり天才だったのでしょう。
あるいは、執念で天才の領域に到達したのでしょう。

ただ、牧瀬紅莉栖を助けるために。

自分の仲間一人を助けるために、世界中を振り回すマッドサイエンティスト。

彼は本当に鳳凰院凶真になったのです。
恐らくは、岡部倫太郎を殺して。

まず間違いなく、未来の鳳凰院凶真はそれなりの地位と名誉を築いているはずです。
大きな研究には、何より地位とお金がいるのです。
そして研究者としては、自分の頭の中に構築した理論。積み重ねた実績。いずれも何よりも大切な財産のはずです。

それら全てを放り出して「意味なぞない」と言い放ち、ただの無力な大学生からやり直す計画。積み上げたそれら全てを、ただ紅莉栖を取り戻すためだけに使う計画。

それが『オペレーションスクルド』。

なんだよそれ。かっこよすぎるだろ。

最後の世界改変とともに消え去ったヒーロー。
自らは決して紅莉栖と再会できない彼のことを、覚えていなければならないと思います。

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投稿者 文月そら : 13:55 | コメント (0) | トラックバック

2011年6月23日

[アニメゲーム感想]シュタインズゲート(Steins;Gate)にハマったの記シュタインズゲート(Steins;Gate)にハマったの記

今アニメで放映中のシュタインズゲートですが、途中まで観てから、ちらほらとネットでネタばれを踏んでしまったりしまして、ネタばれされ切る前にと思い、原作ゲームをプレイしました。ちなみにPC版。

中盤以降、展開が加速してからはあっという間に引き込まれ、トゥルーエンドを迎えてからは毎日シュタゲのことを考えています。

しかし個人史としても、ドラマCDまで買ってしまったのは実にkanon以来であり、キャラソンなんてkanonですら手を出さなかったであろう領域であり(kanonにキャラソンはないけど)、結構すごいハマり様であるといえます。

何がそんなに気に入ったかという話をすると、ほとんど全部ネタばれになってしまうんですが、今日はそれほど大きなネタばれにならない範囲でお話しようかと。完全にネタばれを絶ちたい方以外で、お付き合い下さい。

 
 

最初にアニメで観ていた時に惹かれたのは、実在の事物をからめた楽しげな物語上のギミックです。

たとえばジョンタイター。
実際の歴史では、2000年に米国のネット掲示板に現れた、2036年からやってきたタイムトラベラーを自称する人物です。
私がこの人物を知ったのは2chのオカルト板でしたが、好事家の間ではそれなりの知名度があります。
ジョンタイターの予言なるものが有名ですが、彼のタイムトラベルの影響によって、彼の知っている歴史とは違う時間の流れになっているそうで、外れても不思議はないと言っている、言い訳が完璧な面白い予言者です。

ただ、彼の言ったことには真実も含まれており、シュタゲのキーアイテムとして出てくるIBM5100の隠し機能というのは、本当にあったことがIBMの技術者によって明かされています。

それからセルン。
物語中ではSERNと表記していますが、実在するのはCERN。
高エネルギー物理学の世界的な研究機関で、欧州原子核研究機構という名前です。
インターネットの基礎技術であるwwwやhttpを生んだところとしても有名で、巨大なドーナツ状の施設を使って、日々素粒子をぶつけて壊したり観測したりしています。
最近では、反物質を16分間閉じ込めることに成功するなど、ついこの間まで概念上の存在でしかなかった『反物質』を実際に研究できるところまで持ってきてしまい、世界中の度肝を抜きました。

あとは理論系ですね。メジャーなシュレディンガーの猫、コペンハーゲン解釈、多世界解釈からはじまって、時間順序保護仮説だの量子テレポートだのマイクロブラックホールだの事象の地平面(シュヴァルツシルト面)だの、カオス理論だのバタフライ効果だの……それから、タイムトラベルに関する既存の11の仮説も一つ一つ解説されます。そして、このゲームのあおり文句である、神をも冒涜する12番目の理論。

というかニトロプラス、デモンベインにクトゥルフネタを絡めてきた時も驚きましたが、こういうマニア垂涎のネタをからめてくるのが上手いですよね。

 

そして。
これらすべての面白ギミックをすべてブンまわして、文字通り世界を振り回した結末として最後に描かれるのは……いっそシンプルすぎるといってもいいラブストーリ。このギャップが、また、すごくよかった。
こうして書くとちょっと前のセカイ系みたいですけど……違うんですよ。いわゆるセカイ系では終わらない。主人公:岡部倫太郎は先に進むのです。

それにしても、精緻化リハーサルなんて言葉に涙腺を刺激される日がくるとは夢にも思いませんでしたよ(笑

ストーリに触れられないので、未プレイの人にちゃんと伝わるのか不安ですが、今挙がったような単語に興味を引かれるタイプの人には、かなりお勧めできると思います。

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投稿者 文月そら : 01:08 | コメント (0) | トラックバック

2011年4月27日

[感想書籍]神様のメモ帳1〜6巻神様のメモ帳1〜6巻

 三巻まで読んでみて、これは面白いと思い、最新六巻まで一気に読了しました。


神様のメモ帳 杉井光

 乱暴に言えば、ゴシックと新宿鮫が悪魔合体して探偵は12歳美少女ですという感じのお話です。
 毎回様々な、割としゃれにならない揉め事が起こります。高頻度で暴力沙汰です。
 でも根底に流れるのは、誰かを待っている人と、待たせている人のすれ違い、あるいは再会の物語。

 真実は往々にして救いではない、ということが繰り返し語られます。

 活躍するのは概ね男であり、物語上輝くのもほとんど男という、男性向けラノベとは思えないチャレンジングな仕様ですが、お勧めできる内容だと思います。

 以下、ネタばれありです。


 
 
 
 

 ただ正直、最新刊まで読んでみてのテンションは、三巻までと比べて少し下がり気味です。
 少佐もヒロさんも四代目もテツ先輩も、非常にいいキャラクタで、巻を追うごとに好きになってゆきます。
 ……つうかこの作品は男が魅力的すぎる。
 アニメ化にあたり、物凄い勢いでホモ同人が乱立しそうな予感すらします。
 主人公の鳴海も、女性関係での他人事ながら殴りたいほど腹が立つ鈍感ぶり以外は、魅力的なキャラクタです。
 それなのに、なんでテンションが下がり気味なのか。

 それは、四巻以降、彩夏の扱いが酷すぎるからです。

 鳴海にとって彩夏は、はじまりの唯一人であり、世界の扉そのものであったはずです。
 彩夏と知り合い、園芸部に、ラーメン屋に誘われなければ、何も始まらなかった。
 ただ一人でグチグチくすぶっている、一巻冒頭時点のうっとおしい鳴海のままだったはずです。

 彩夏は一見社交的ですし、周囲のあらゆる人とうまくやっているように見えてしまいます。ほっといても問題がないように思われがちでしょう。
 でも実のところ彼女のそういう姿は、周囲から期待された役割を演じているだけで、内面的には離人症に近い状態なんじゃないかと思われるほどです。
 記憶を失ってからは特にそうだと思います。前より一層、自分が本当に何を考え、何をしたいのか、わからなくなっているんじゃないかと。

 そして、物語上の立ち位置は、現在、ほぼモブになっています。
 園芸委員会での接点もなくなり、また事件捜査にも関われない以上、自然なことではありますが……。
 積極的な分、メオの方が目立つくらいです。

 で、少なくとも鳴海は、彩夏がそういう性格だということを知っているはずです。
 見た目よりもずっと危うい。むしろ登場キャラクタの誰より爆弾をかかえている。
 何かの拍子に記憶を取り戻しでもしたら、発作的に何をするかもわからない。それも知っているはずです。

 それなのに、なぜあんなに放っておけるのか。
 一度完全に失って、あんなに苦しんだくせに。

 ぞっとしたのが、最近、鳴海とアリスが二人きりで事務所を開き、そこで生活することを応援するような発言を、彩夏がし始めたことです。
 それまでは、無防備なアリスを諌める(=二人の間に割って入る)立場だったのに。
 単純に『アリスと鳴海の友人としての彩夏』という役割を演じたんだと思うのですが……これ、かなり高水準で自分を見失ってしまっているんじゃないか。しかも、自分から二人に話を振っているし。
 ……何か、彼女の中で、マズいことが起こっている気がして仕方がありません。

 そういうことを考え出すと怖すぎて、アリスと鳴海のラブコメシーンも全く楽しめません。二人とも彩夏ほっといて能天気になにやってんだと思ってしまいます。
 このへんは多分私がアリスに全く感情移入できないのも悪いんだろうとも思うんですが……。俺妹の桐乃もそうですけど、どうも『素直になれなくて不器用なあまり横暴になる』キャラクタが苦手なんですよね……。視界から外したくなってしまう。
 まあ、小学生のアリスにそんな配慮を求めるのは酷な話ですけど。

 作者さんが単に何にも考えていなくて、成り行き上彩夏が空気ヒロインになったというだけなら(別ベクトルで腹は立つものの)まだいいんですが、わざわざ三巻で結局彩夏の記憶を戻さなかったことを考えると……何か仕込んでいるんだろうなあ。
 考えてみると彩夏の兄、かなりいろんな主要人物にかかわりの深いキャラクタのはずなのに、あれ以降全く出てこないし。
 ここまでの丁寧な話作りから考えても、何かありそうです。

 ということで、怖がりながら続刊を待ちたいと思います。

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投稿者 文月そら : 02:06 | コメント (0) | トラックバック

2011年3月 3日

[感想書籍漫画]物凄く天野美汐方面に偏った綾辻行人「Another」漫画版の感想物凄く天野美汐方面に偏った綾辻行人「Another」漫画版の感想

※致命的ではないと思いますが当方小説版を読了しており、多少ネタバレあります。ご注意を。
 
 
Another 綾辻行人 清原紘


 最初に謝罪しておきますが、私は綾辻行人さんの作品に苦手意識がありました。読んだのはいわゆる館シリーズだったのですが、面白いけど、どこか合わないなあと思っていたのです。
 この『Another』も、実は以前薦められたことがあったのですが、そんなわけで敬遠していました。
 ところが、これの漫画版を読む機会がありまして、衝撃を受けました。

 さて。私は大体、どんな作品に触れるときでも、無意識のうちに美汐ランキングを作ってしまい、その上位ランカーを無条件でひいきする傾向があるのですが……この『Another』のヒロイン、特に漫画版の見崎鳴の天野美汐っぷりといったら物凄いレベルでした。ちょっと類例が思いつかないくらいです。

例えば……。

・ボブで髪の毛くるくる
・クラスで孤立
・事件の開始を告げる役割を担っている
・真面目で物静か
・それなのに不思議なことをいい、不思議な行動をとる
・つまり語り部であり、存在そのものが物語の説得力になっている
・過去にとても悲しい別れを経験している

 しかも作画の清原紘さん、凄みすら感じるほど、美しく、かつ、不吉な画面作りをされていて、雰囲気も素晴らしいのです。

 ひと言で感想を言うなら
「うおお! 鳴ちゃん不吉可愛いいい!!」
 ……といったところでしょうか。

 そんなこんなで漫画版の一巻を読んでから居ても立ってもいられず、ハードカバーの原作を借りてきて全力で読みきりました。

 そしたら更に素晴らしい事実に直面しました。
 この話、ホラーなのにすげえヒロインと主人公がいちゃつくんですよ!
 まあ、二人とも真面目な性格なので、直接的ないちゃつき方はしないんですけど、とある事情もあって、ずっと二人きりで事態に対応していくんですよね。もうなんつうか、すばらしい。

 まともな感想も言っておきますと、読みながらホラーとミステリの相似について考えさせられました。すなわちどちらも『明かされない真実』があって、その解明に取り組むと共に事態の打開を図るわけですから。
 さすが実績あるミステリ作家らしく、すごく丁寧に伏線回収をするホラーで、特に終盤、話のピースがぴたりぴたりとはまっていく様はとても気持ちよく、面白かったです。綾辻さんの作品への偏見を綺麗さっぱり吹き飛ばしてくれました。
 そもそも館シリーズを読んだのは遥か昔、学生時代の話ですから、今読むと印象が違うかもしれません。今度読み直してみようと思います。

 漫画版のほうは今月2巻が出たのですが、その帯でアニメ化、実写映画化が発表されました。物凄く楽しみです。

 そしておそらく漫画では3巻からいちゃつきが始まるので、そっちは更に楽しみです!!

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投稿者 文月そら : 20:53 | コメント (0) | トラックバック

2011年2月 1日

[ゲーム感想]うみねこのなく頃にとは何だったのか〜Ep8プレイ後の個人的総括〜 うみねこのなく頃にとは何だったのか〜Ep8プレイ後の個人的総括〜

※本エントリはネタバレのみで構成されています。ご注意ください。


 
 
 
 

 『真相なきミステリにして犯人のいるファンタジ』という感じでしたね。

 随分と思い切った幕を引いたなあというのが一番大きな感想です。
 ミステリの定義をどこに置くのかという話だと思うのですが、フーダニット(犯人は誰だ)という意味では、一応前のエピソードで黒幕が語られたわけですが、結局個々の事件の実行犯は明言されませんでした。ハウダニット(どうやって)ホワイダニット(動機)についても、やはり大枠が語られたのみで、詳細はほのめかされたに留まりました。
 つまり真相という意味では、エピソード7で語られた内容にとどまり、エピソード8というのは、幕引きだけに特化した物語であった、と認識しています。これをミステリと呼ぶのか、ファンタジと呼ぶのかは、本当に読者次第なんだろうなと。個人的にはどちらとも呼べません。うみねこはうみねこだったと思います(笑)

 ひぐらしの解答編でもみられた演出なのですが、竜騎士さんは我々観客を舞台にあげるのが好きだなあと、改めて思いました(『惨劇を哂え』などのCD販売時の煽り文句や、罪滅し編の『惨劇を期待していた地獄の観劇者ども』『悪魔どもが喜ぶ脚本』などの台詞)。
 それにしても今回は直接的でしたね。『真相究明』が『悪趣味な醜聞暴露』に置き換わって、プレイヤーたる我々の好奇心は、まるで芸能リポーターさながらの醜悪な悪魔となって虚構の六軒島を食い尽くしてしまいました。叩きつけられた皮肉に思わす苦笑してしまいましたけど、第三者であることを許さず、否応なく舞台に巻き込んでいこうとする演出は面白かったです。

 私はどちらかというとまともに推理していたほうではなくて、かといってファンタジをまるごと受け入れていたわけでもなく、人間ドラマとしての物語に興味をもって読んでいたので、このエピソード8にはトリックよりも『実際に起こった出来事』と『それをめぐる心情』に期待していました。だからそれが語られなかったのは残念です。

 特に紗音であり、嘉音であり、あるいは理御であり、クレル=ヤス=ベアトリーチェであった人物が、本当に愛した人は誰だったのかがすげえ気になっていたので、これがわからなかったのは本当に残念です。
 だってこの人、下手すると人格の数だけ恋してやがるので(笑)
 どうか譲治のアニキが泣く羽目になっていないことを祈りたい。
 (というかこれこそ芸能的な出歯亀興味なのかも……(笑))

 それでもざっくり言って、以下のことは正しかったとみていいようです。

・ループ世界ではない
・幻想描写は全て創作
・絵羽生還、縁寿をひきとり、真相を隠したまま死去
・戦人生還

 でもって、絵羽生還のエピソード3は、絵羽が匂わせ、縁寿が想像していた真相だったんじゃないですかね。戦人が悪のエヴァと最後まで勇敢に戦い、敗れた。しかし戦人が殺される描写だけはなかった、というあたりからも。

 これは単なる想像ですけど、真相を最後まで語らず、口ではどう言っても縁寿に全財産を相続させた絵羽は、多分犯人ではないですね。露悪的に振舞い続け、身を挺して真相を守ったようにも見える絵羽のふるまいから言うと、案外エピソード8の推理ミニゲームの通り、縁寿の肉親、留弗夫一家主犯説が本当なのかもしれません。……ただ、その場合最愛の家族を殺された絵羽が縁寿をひきとって守るかというと疑問なんですが。

 あと気になるのは、戦人が脱出の際、ベアトリーチェを伴っていたという描写ですね。
 これが本当だとするなら、事件の過程でベアトリーチェの正体を戦人は知り、彼女もベアトリーチェとしての自分を選択して脱出したいうことになり、すると譲治アニキが泣いてしまうんですが……。

 一応これでうみねこのなく頃にという物語は幕引きとなったわけですが、こういうメタの上にメタを重ねて、さらにその上から真相を想像させようとする物語が、ここまで沢山の読者を伴って完結したのはすごいことだなあと思います。だって普通こんな複雑なギミックの物語はこんなに読まれませんもの。読むの大変で(笑)
 大ヒットを飛ばした作家は、自分の書きたいものを書いて、それを沢山の人に読んでもらえる。それはとてもうらやましいことだなあと、個人的に思いました。

さて、次の夏コミでひぐらしみたいに『礼』は出るのかしら。一応出るような話はあったけれども。出るならまた買おうと思います。

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投稿者 文月そら : 00:57 | コメント (0) | トラックバック

2010年12月19日

[感想漫画]「docca」「docca」

先日ようやく冬コミの原稿あげました。なんと「真剣で私に恋しなさい」本にゲストしたのです。
詳細は近日中にお知らせしますが、幼少時代本になるようですよ。

さて、そんなこんなで手が空いたので、新規漫画に手を出してみました。それがこの「docca」です。

どっか騒動で大揺れの虹ヶ丘町。そこに一人の少女が転校してきたことで、何かが起きたり…起きなかったり!? 軽妙洒脱!超待望第1巻!

詳しい内容とか絵とかはアキバブログさんでも紹介されているのでご参考まで。
異世界とつながった平凡な町でのシュールな日常の話なんですが、これが存外に面白かったです。
前半はネタフリみたいな感じで、安定した絵柄を背景に、この町のムチャクチャさが割と淡々と描写されていきます。
そして後半。というか最後。そうしたこれまでのネタが縦横に連関した物凄くシュールな展開を見せて、大笑いしてしまいました。
今巻の基本モチーフは『王子』ですけど、高貴さとか、ステータスの高さとか、そういう王子という言葉に付随する先入観を根底から覆してくれました。

今後も楽しみに待とうと思います。

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投稿者 文月そら : 18:46 | コメント (0) | トラックバック

2010年11月10日

[感想書籍]「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」7巻感想その2「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」7巻感想その2

 昨日のエントリ(リンク先ネタバレ)について、えむけーつーさんから言及をいただきました。これはそのお返事をかねてのエントリです。
 当然ネタバレしかありませんので、原作未読の方は回避推奨です。


 
 
 

 えむけーつーさんにいただいた言及はこちら
 ……なるほど、桐乃と京介に血縁がなく、そのことを桐乃しか知らないと仮定すれば、現状の桐乃と京介の温度差についても綺麗に説明がつきますね……。
 非血縁説については、何度か目にはしていたものの、ずっとスルーしてきました。おそらくひとえに黒猫に不利な話であるせいです……。でも、これは無視できなくなっちまいましたね。

 何かのタイミングで(そういえば桐乃はプロモデルであり、あの年で仕事をしていますから、契約の時に戸籍を取り寄せた可能性があります)、真実を知った桐乃。大好きだったお兄ちゃんと、実は血の繋がりがなかった。距離のとり方がわからず、挙動不審になる桐乃。その妙に色気づいたような対応に、京介は兄として気持ち悪さを感じて、何かの暴言をはく。これが今巻の

「あのときは気持ち悪いみたいな顔したくせに! なんでいまさら! いまさら! そんなこと言うのよ!」

 という台詞につながっていると考えられます。
 傷付いた桐乃は、京介を露骨に拒絶するようになる。京介はわけもわからないまま、これまで仲の悪い兄妹の関係に甘んじてきた……。ううん。すげえ綺麗にはまるなあ。
 「大好きだったお兄ちゃん」の部分がひっかかる方もおられるかも知れませんが、大体、お互いに大嫌いってことは、お互いに強い関心を持っているということの裏返しでもあります。何かの事件が起こる前は、物凄く仲が良かったんじゃないかとも考えられるわけです。実際、関係が修復されてみると、京介の主観はともかく、第三者からみたらベタベタ湿度の高い兄妹関係になっているわけですから、そういう可能性は高いといえるでしょう。
 また、京介に桐乃が生まれたころの記憶があることが、この非血縁説の障害となっていますが、これもこう考えればクリアできます。すなわち、『妹が実子で、兄のほうが養子、あるいは連れ子』であればよいのです。
 うひゃあ。なんだこの嵌まり様。もう非血縁としか考えられなくなってきました。

 さて、桐乃と京介に血の繋がりがないとすると、俄然桐乃エンドのハードルが低くなってくるわけですが、黒猫派たる私の反論としては、以下の二点があります。

 まず一つ目は、京介自身のモラルの問題です。たとえ事実として桐乃と血縁がなかったとしても、今さら京介は桐乃を女としてみられないんじゃないか、ということです。京介はこれまで、心の底から桐乃を実の妹だと信じてきたわけで、その強固な意識は変えようがないんじゃないかと思います。事実はどうあれ、京介にとって、桐乃は大事な妹であり、それはもはや動かせないと思うのです。

 もう一つは、昨日のエントリでも少しお話しましたが、最後のこの描写です。

この告白から数日後――
 俺と黒猫は、恋人になった。

 この『数日後』がなかったら、もっと不安になってたんですよ。確かに、物語の原則として、先行提示した情報は、覆すのが定石ですから。
 でも、京介はこの場では返事をしていない。これはつまり、この数日間に、まだ開示されていない物語があるということです。その帰結として、京介は黒猫と恋人になることを決断した。それだけは、確約されているのです。

 ……まあ、それでもその後、最終的にどうなったかはわからないわけですけど。
 ということで、黒猫派としても結構ゆらいでおります。そういう意味で今回MK2さんの提示してくれた図式の綺麗さは救いです。すがりたい。

 とまあ、こういうような話を書いていたところ、necolaus.netさんからトラックバックをいただきました。ありがとうございます。
 なるほど、確かにモラルを論拠にせずに解釈すると、色々苦しいですよね……。タイトル的にもメインヒロインが桐乃であるのは間違いないわけですし。

 でも一つだけ反論させてください。

 黒猫は、桐乃を奮い立たせるため、敢えて自らを犠牲にする覚悟を以て先に告白したのではないか

 これは違うかもしれません。
 7巻の黒猫のこの言葉が根拠です。

「結局私は、ある人を見習って、自分の欲求に素直になろうと決めたの。思い切り、欲張りになろうと決めた。……きっとあの女ならこんなとき、どちらかを諦めたりはしないでしょうから」

 ここで黒猫は桐乃も京介も両方取ると宣言しているからです。この決意はホンモノだと思います。

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投稿者 文月そら : 22:29 | コメント (5) | トラックバック

[感想書籍]「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」7巻感想「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」7巻感想

 いやびっくりですよ。
 何がって、あの例の事前ネタバレでも流れた一番最後の展開のことですけどね。
 あんまりびっくりして、死んでたブログが生き返りました。

 以下、ネタバレ満載でおおくりしますので、未読の方は回避推奨です。

 
 
 

 今回はまた随分とバランスを崩してきたなあ、というのが大きな印象です。
 このシリーズはこれまで、恋愛関係にせよ、友人関係にせよ、家族関係にせよ、決定的なひと言は言わずにまわしてきました。まあ、黒猫がキスはしてましたけど、あれも「呪い」という言い訳付きでした。
 誰もが自分の好意を相手に伝えることなくここまできたのは、お互いが臆病という言い訳の元、現状に甘んじていたから。何も言わなければ、少なくとも現在のポジションを失うことはないから。それが、京介を中心としたラブコメシステムを支えていました。

 最初に桐乃がそのバランスを崩してきたのは意外でした。二度の狂言彼氏騒ぎ、明らかにどちらも、京介の気持ちを量るためにやってますからね。正直、桐乃の気持ちというのは、妹としての好意にとどまるはずだと思っていたので、ここまでの行動に出てくるとは……意外でした。
 作中で桐乃自身も言っていますが、この桐乃の行動を触発したのは、麻奈実と黒猫の存在です。

「自分はっ! 自分はっ! 地味子とかっ……あの黒いのとかといちゃついてるくせに! 勝手なこというなっ!」

 でもって、この次に、桐乃は気になることを言っています。

「あのときは気持ち悪いみたいな顔したくせに! なんでいまさら! いまさら! そんなこと言うのよ!」

 『あのとき』……普通に考えれば、7巻前半の京介とのデート、最後の口論のことを指すような気がしますが、良く考えてみるとちょっとおかしい。

「せっかく俺が嫌々協力してやったっつーのによ」
「おまえの彼氏役なんざ、もう二度とごめんだね」

 桐乃を怒らせたと思われる京介の台詞はこのあたり。ウザ顔はしていそうですが、嫌悪感をみせているシーンではなさそうです。
 更に『いまさら』という言葉も気になります。『いまさら』という言葉には、もうある程度古い過去のことで、しかも取り返しがつかない後悔のニュアンスがあると思います。……どうも、あの未回収の伏線『押入れの中のまだ見せられない秘密』がからんでいるような気がします。

 今回、『妹の彼氏』という存在をテーマに、兄妹がぶつかったわけですが、恐らく次は、この構図がそのまま反転するものと思われます。すなわち『兄の彼女』。桐乃のほうについては、恐らく最後の長電話で、これからする黒猫の告白について聞かされていると思うので、ある程度は冷静に対処してくると思いますが、問題は麻奈実ですね。
 京介にとって麻奈実とはどういう存在なのか。京介が常に軽く扱ってきた麻奈実ですが、それでいて麻奈実に彼氏が、なんていう話になると不機嫌になったりして、独占欲だけは発揮してきました。
 思うに、京介にとって麻奈実というのは、妹かつ姉のような存在だったんじゃないかと思うんですよね。今回見せた桐乃への執着と近い意味で、麻奈実にも執着してきた。でも麻奈実のほうはそんな気持ちからは一歩も二歩も踏み込んでいるわけで……このすれ違いが、トラブルを生まずにはおかない。これに桐乃との過去もあわせて、京介はこれまでのツケをまとめて払わされる、手痛いしっぺ返しをくらうことでしょう。……あやせと麻奈実とのつながりが、今回わざわざ示唆されたことも考えると、更に恐ろしいことになる可能性も……。

この告白から数日後――
 俺と黒猫は、恋人になった。

 数日後っていうのがポイントですよね。京介はこの場ではOKしていない。恐らくこの間のすったもんだが、次巻で描かれることでしょう。

 ――まあ、黒猫派としては願ってもない展開なわけですが、あまりにも都合が良すぎて怖い面もあります。この期に及んで最終的に黒猫振ったりしやがったら京介覚悟しやがれって感じですよ。
 ようやく執筆が始まったかどうかというところであるようなので、まだ先でしょうけど、今から次の巻の発売が待ち遠しくてたまりません。

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2010年2月22日

[感想書籍]『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』(ネタバレあり)『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』(ネタバレあり)

 誠に失礼ながら、侮っていた。というのが正直な感想である。
 一応このお話の概略は人づてに聞いて知っていた。

曰く、妹がかわいい話である。
曰く、妹はオタクであり、それを隠している。
曰く、有名ニュースサイトの名前が出てきて、発売当初各サイト大騒ぎしていた。
などなど。

 それら風評を耳にするにつけ『なんとなく内容は想像つくなあ』『まあ読めば面白いのだろうけど、なんか色々あざとい気もするしなあ』などと思い、結局手を出さずにここまできた。
 そんな中、初音ミクの絵と曲から入って、挿絵のかんざきひろ氏のファンになり、コミケで本を買った余勢を駆って、自分の中で再びクローズアップされてきたのが、本作「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」だったのだ。

 ということで、買って、実際に読んでみた。
 当初の見込みとしては、お約束満載の萌え小説だろうと思っていた。正直、あまり好きなタイプの話じゃないかも、と思っていた。……でも、全然違った。
 勿論、キャラ配置や設定をはじめ、いわゆるお約束的な道具立ては結構ふんだんに用意されている。その辺の印象は当初とそんなに違わない。しかし、それを使って描こうとしている部分、フォーカスがあたっている部分が全く違った。
 それは、ひと言で言うなら『現代のオタクを巡る諸問題と、そこに生きるオタクの姿』といったものだと思う。
 隠れオタクと一般人とのコミュニケーション問題であったり、いわゆる児ポ的な問題であったり、同人活動であったり、才能と嫉妬の問題であったり、オタクであること自体の恥ずかしさであったり。切り口は各巻様々だが、我々にとって結構重いテーマが、明るく、しかし真摯に描かれている。
 そこに描かれる登場人物の姿も魅力的だ。彼らはオタク非オタクを問わず、思想的な対立はあっても、皆根本的には誠実で優しい。こだわりや信条、コンプレックスや偏見で時に強く対立することはあっても、皆最終的には相手の話を聞く耳を持っている。
 主人公は実は非オタなのだが、彼の持つ眼差しの優しさも素晴らしいと思う。彼にはどんなに素直じゃない人間が相手でも、自然にその良さを見抜ける目がある。それなのになんで妹のことだけ散々延々と誤解し続けてたんだとも思うが、まあ身近すぎたんだろうし、その辺は語られないエピソードがありそうだ。特にアルバムのあたりに。
 まあ正直なところ、現実はそんなに甘くねえですよとも思わんこともない。世の中そんないい人ばっかりではないし。……でも、それはそれとして、主人公を囲む、オタクや非オタクたちの優しい世界が、私は嫌いじゃない。

 とりあえず、気配り超人こと沙織の正体と、完全な一人勝ちかと思われたヒロインレースに、最新刊で突然大外から物凄い足でまくってきた黒猫の今後が気になる作品です。

 あ、一つ書き忘れたけど、タイトルから連想されるような「妹の正ヒロイン昇格」だけは絶対無い作品です。どう転がっても互いの甘えから抜け出せずに不満を溜め込んだり、当り散らしたり、すれ違ったりしてしまう。家族としての兄妹の距離感の描き方も、この作品の見事な点だと思います。

俺の妹がこんなに可愛いわけがない (電撃文庫)俺の妹がこんなに可愛いわけがない (電撃文庫)
伏見 つかさ かんざき ひろ

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投稿者 文月そら : 02:20 | コメント (2) | トラックバック

2008年10月13日

[アニメ感想]今期アニメ雑感今期アニメ雑感

■とらドラ
 とりあえず第一話観て小説版を全巻読破しました。面白かった。
 で、その目で第二話を見ると、ちょっと展開が早すぎる気がしました。
 とらドラって心情劇であって、出来事の流れそのものは割りと平凡だったりするので、第二話の、モノローグ省いて出来事を羅列したような描き方だと魅力が伝わりにくいんじゃないかと危惧。
 特に告白シーンでの竜児の『並び立つ葛藤』みたいなものは見せて欲しかった。

■喰霊
 第一話のみ視聴。
 原作は全く知りません。しかし意外な伏兵。
 久々にAICの本気を観た。
 物凄く気を惹く初回。先の展開がまるで読めません。
 とりあえずタイヤのトレッドパターンで浄霊するアイディアは初めて見た。

■ガンダム00セカンド
 第一話のみ。
 現時点では何も分かりません。
 ルイスどうなっちまったんだ。あとセルゲイ家の家庭の事情萌える。

■テイルズ オブ ジ アビス
 原作未プレイ。
 藤島絵からすると主人公まわりのキャラデザがちょびっと違和感かしら。
 でも丁寧に作られていると思う。
 割と期待してます。

■クラナドアフター
 まだ第一話のみ。
 芳野さん大好きすぎる。
 国崎最高。
 ゆきねえがいないことに涙。

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投稿者 文月そら : 01:05 | コメント (0) | トラックバック

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